宝塚歌劇団の宙組に所属していた劇団員の女性(当時25)が2023年9月に死亡しているのが見つかった件で、劇団に対してパワハラの認定や謝罪を求めていた遺族側が会見し、劇団側が14項目にわたるパワハラの存在を認め、謝罪した事を明らかにした。そのうえで双方が合意書を締結したという。劇団側も28日の同時刻に会見している。

遺族代理人によると劇団側は、長時間の活動を余儀なくさせ、過重な負担を生じさせたことと認めた。さらに、14項目におけるパワハラに該当する行為によって、多大な心理的負荷を与えたことを認めて、劇団経営陣の怠慢によって長年にわたり劇団員に様々な負担を強いるような運営を続けてきたことがこうした事態を引き起こしたとして、「全ての責任が劇団にあることを認め」、「安全配慮義務違反があったことを認め、謝罪する」との内容の合意を締結したという。

謝罪については、宝塚歌劇団を運営する、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長が遺族に対して直接謝罪したという。

そのうえで、「阪急・劇団は、本件と同様の被害が二度と生じないよう、健康な職場を作るために全力を尽くすことを約する」としている。また、劇団側が慰謝料用解決金として「相当額の金員を支払う」という事についても合意がなされたという。

劇団側は当初、過密なスケジュールなどで劇団員に心理的負荷がかかっていた可能性を認めた一方、いじめやパワハラは確認できなかったとしていた。

これに対し、遺族側は「到底納得できない」として、劇団幹部や上級生らによる15件のパワハラがあったと主張。劇団側は遺族側の証拠の提示を受けて、再調査を行なっていた。

劇団側が認めたパワハラ行為は、女性が望んでいないのに上級生がヘアアイロンで髪を巻こうとして額にやけどを負わせたこと、2日連続で深夜に髪飾りの作り直しを上級生に指示されてやったこと、宙組幹部4人に会議室に呼び出され、女性が過呼吸になるほど大きな精神的な負担を生じさせたことなどが列記されている。

遺族代理人は、「合意書による謝罪により本件は一つの区切りがついた」と述べた。

そのうえで、「宝塚歌劇団は、歴史的にも国際的にも我が国を代表する芸術団体であり、内外に多くのファンを持つエンターテインメント集団です。このような著名な劇団において、将来ある若い劇団員のいのちが奪われたことは、いわゆる『ジャニーズ問題』に勝るとも劣らない重要な人権侵害事件」と定義。「阪急阪神グループは、本件の劇団員の死亡という痛ましい現実を痛苦に反省し、事件後、速やかに遺族に謝罪すべきでした。しかるに、調査チームの誤った報告書内容に追随し、事実を究明せず、責任を曖昧にし、パワハラを否定し続けました。ご遺族の毅然とした姿勢によって、ついに事件発生後約半年を経て、本日、合意書の締結に至りましたが、同グループが反省し改善すべきことは無数にあることを強く指摘しておきます」と指摘した。