●U-23アジアカップを通じて見せた高井幸大の成長

 AFC U-23アジアカップ2024カタールを制したU-23日本代表の国内組が4日に帰国した。決勝トーナメント全3試合を含む5試合にセンターバックとして出場した高井幸大は大会MVPに選ばれた藤田譲瑠チマらと並ぶ大会制覇の立役者の1人だろう。羽田空港で取材に応じた高井は、大会を通じて得た収穫を明かした。

 準決勝と決勝の2試合はクリーンシート(無失点)に貢献するだけでなく、決勝では見事なインターセプトから決勝点の起点になるなど、攻守両面で優れたパフォーマンスを披露した。「個人としてもチームとしても成長できた大会になった」と振り返ったが、大会全体を通してみれば決して順風満帆ではなく、いくつかの試練が高井に課せられていた。

 U-23中国代表とのグループリーグ初戦では先制後の17分にセンターバックの相棒でもある西尾隆矢が退場処分を受けるアクシデントがあった。数的不利となったことでその後の試合の進め方が難しくなってしまったが、途中出場の木村誠二とともに相手のロングボールを跳ね返し続け、白星発進に貢献した。

 グループリーグ第3戦では5バックで守るU-23韓国代表戦に手を焼き、チームとして効果的な攻撃を繰り出すことができなかった。準々決勝でも退場で1人少なくなったU-23カタール代表に逆転を許す苦しい展開。セットプレーと延長戦の2得点で再逆転に成功したものの、オープンな状況での崩しはチームの課題として残った格好になった。

 今大会は中2日、3日での試合が続き、試合ごとの修正をチームとして行う時間は限られていた。そんな状況下でも高井は課題を消化して次の試合へとつなげていた。

●高井幸大が克服した課題「最大限に表現できた」

「攻撃のところで矢印を決めたり、ボールを持つところでもう少し自分が主導権を持ってやれればいいかなと、やりながら(プレーしながら)思っていた。最後の方はビルドアップのところも積極的に関われましたし、自分のプレーを最大限に表現できたかもしれない」

 準決勝のU-23イラク代表戦は高井らしさが存分に出ていた。大会を通じたデュエル勝率66.7%、空中戦勝率65.1%を記録するなど、ディフェンス面での強みを出しながらカード無しというクリーンな守備を披露。それに加えてイラク戦では川崎フロンターレで培ってきたキャリー能力や縦にパスをつける正確性をいかんなく発揮していた。イラク戦について高井も「攻撃に関しては上手くいったかなと思う」と手ごたえを感じる。そして、先述したように、決勝では見事なインターセプトから決勝点を演出している。

 所属する川崎フロンターレではベンチに控える試合も多かったが、3月のU-23マリ代表戦では攻撃面で一定の手応えを感じさせるパフォーマンスを見せた。その後は川崎で3試合連続の先発出場。高井は抜擢の応えるクオリティを見せ、チームはその間わずか1失点と強固なディフェンスを築いた。そんな状況で臨んだU-23アジアカップでも、高井は出色の出来を披露している。

 J1リーグや五輪に出場するU-23マリ代表、そして今回のU-23アジアカップと、高井は高いレベルの相手との対峙を通じて、逞しさが増している。U-23日本代表ではチーム最年少だが、いい意味で若さは感じなくなってきている。

「いつも通りやればやれると思っていた。もっと相手の質が高くなったり、強豪国で自分たちより質の高い相手に対して、自分たちがどうできるかがこれからは大事になってくる。決勝では正直なところ、相手の思うようにやられたと思うし、マンツーマンで来た相手に対して自分たちがどう相手をはがすかもやっていかないといけない」

 この19歳の視座は高い。残された時間は短く、パリ五輪までにやれることは限られているかもしれないが、19歳の高井が今まさに急勾配の成長曲線を描いている。本大会メンバーに選出されればさらに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのではないか、という期待は膨らむ。

(取材・文:加藤健一)

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