なんとなく気分が晴れない、些細なことに苛立つ……。そんな「不機嫌」をもたらす原因や、上機嫌で過ごすためのヒントを、自律神経の名医が教えます(構成=島田ゆかり イラスト=すぎやままり)

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年齢とともにスイッチの切り替えが鈍くなる

私は日頃、診察でさまざまな患者さんと接していますが、「若い頃よりもイライラしやすくなった」「気分が落ち込みやすい」と訴える60代以降の方は少なくありません。ご自身の体調が万全でなかったり、大切な人を見送る機会が増えたり、この先の生活に不安を感じたりなど、心配事が増える年代ですので、それも当然なのでしょう。

加えて、ここ数年続いたコロナ禍は人々の精神面に大きな影響を及ぼしました。自粛によるストレスや運動不足、コミュニケーションの減少などがきっかけで、フレイル(心身虚弱)状態の人が急増したのです。

それだけでなく、気分が晴れないとやる気も出ず、うつや認知症のリスクも高まる、という悪循環が起きます。ですから、シニア世代にとって「自分で自分の機嫌をとる」ことは、非常に重要なのです。

こうしたイライラや落ち込みの原因は、社会の状況や自分を取り巻く環境などの外的要因ばかりではありません。実は「自律神経」も影響しています。

自律神経とは、呼吸や血液循環、消化などの生命維持機能を自動的に調節する神経のこと。活動時に優位になる「交感神経」と、休息時に優位になる「副交感神経」が交互に働くことで体を調整しています。

両者がバランスよく働いている状態が心身のベストコンディション。ところが、年齢とともにスイッチの切り替えが鈍くなり、神経自体も老化して、バランスを崩してしまうのです。