「生きる理由」を思い出した

私は未だ、虐待被害による強いフラッシュバックと希死念慮に苛まれる苦しい時期を過ごしている。ヒオカさんの著書には、タイトルにある通り著者が「死ねない理由」が綴られていた。その詳細に関しては、ここでは明記しない。ただ、本書を読み終えて、私は「よかった」と思った。ヒオカさんが生きていてくれてよかった。生きて文章を書いてくれてよかった。何より、これから先の著者の人生が幸せであれと切実に祈った。


『死ねない理由』(著:ヒオカ/中央公論新社)

ヒオカさんの身にこれまで起きた苦難、置かれてきた境遇、現在進行系で抱えている問題は、決して「よくない」ことだ。だが、著者はそれらを冷静に外側から俯瞰し、“どうすれば自分と同じ境遇の人を減らせるのか”と心を砕き、信念を持って文章を綴っている。その生き様は、生きる意味が霞みがちな今の私にとって、強い杭となった。

“書くことで、人を変えることなんてできない。でも、たぶんそれで良い。ただ、読んだ人がほんの少しだけ、気持ちが豊かになるような。そんなものが書ける瞬間のために、今はもう少し頑張ってみようと思う。”

本そのものは無機物だが、本には人の魂が宿っている。過去も今も、そしてこれからも、私は本に生かされる。私の「死ねない理由」「生きたい理由」「諦めたくない理由」の根源につながるものが、本書には詰まっていた。
私は、書きたい。まだまだこの先も、書いて生きたいのだ。

もう少し、がんばってみよう。

著者の想いに共鳴し、そう思えたからこそ、私は今、この文章を書いている。昨日は、庭の一角を鍬(クワ)1本で開墾して新たに畑を作った。汗をかき、水分を欲している体は、たしかに生きようとしていた。

※書籍引用箇所は全て、ヒオカ氏著作『死ねない理由』本文より引用しております。

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