2023年に厚生労働省が発表した「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によると、人生の最終段階における医療・ケアについて、半数以上の人が「考えたことがある」と回答したそう。そのようななか今回は、お金や住まいに困らず、将来すんなり逝くための「ダンドリ」について専門家に解説していただきました。緩和医療医の大津秀一先生いわく「終末期の患者さんに訪れるのは身体的苦痛だけではない」そうで――。

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終末期の患者さんに訪れるのは身体的苦痛だけではない

私の職業は「緩和ケア医」です。これまでに約3000人の患者さんの最期と向き合い、主にがんの患者さんを対象にその心身の苦痛を和らげる仕事をしてきました。

特に末期のがん患者さんを苦しめるのは身体的苦痛です。お話をよく伺い、おおかたの場合、薬などを使ってその苦痛を取り除いていきます。

しばしば厄介なのは、精神的苦痛です。これは医師の力だけではどうにもなりません。患者さんから示される悩みは、もはや残された時間と体力では解決できないであろう問題も少なくないからです。私にできるのは、患者さんのお話にじっと耳を傾けることが中心となります。

人はいつ死ぬかわかりません。死ぬときに後悔しないようにするためには、私たち一人ひとりが健康なうちから悔いのないように生き、後悔を残さないように準備しておくことができれば、それに越したことはありません。