5月11日夜から12日未明にかけて、オーロラとみられる現象が北日本や北陸などで観測された。通常は北極や南極に近い高緯度の地域でしか見られないが、史上最大級の磁気嵐が発生したとされる1770(明和7)年には全国各地で目撃され、福井県内にも赤い空が描かれた貴重な史料が残る。「仏の後光のよう」「甚だ奇怪なり」。徐々に色や形を変えた様子を絵や文章で詳細に伝え、研究者の注目を集めている。

 オーロラは太陽表面の爆発「フレア」に伴う強い磁気嵐の影響でごくまれに日本でも観測される。肉眼ではほとんど見えなかった今回と異なり、1770年当時ははっきりと観察できたとみられる。

 福井県指定文化財「橘家文書」(県立歴史博物館所蔵)のうち、現在の福井市木田地区で医師をしていた橘宗賢の日記「橘宗賢伝来年中日録」に、福井城下から目撃したとみられるオーロラが「紅気」として記述されている。

 旧暦7月28日(現在の9月17日)の夕暮れから北の空の一部が赤くなり始め、深夜には大きく広がったとし「大衆は加賀・大聖寺方面での火災だろうと言っていた」。赤い空の中にしばらくの間、青白い筋が縦に数十本現れた様子もうかがえ、「糸を張ったようにまっすぐだ」「仏の後光のよう」「甚だ奇怪なり」と評した。真っ赤な空に筋が入った絵も添えられている。