ヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野口寿浩氏が予想した

 2024年のパ・リーグは、3連覇中のオリックスからエースの山本由伸投手がポスティングシステムを利用してドジャースへ、山崎福也投手も国内FAで日本ハムへ流出。にわかに混戦模様となっている。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として21年間活躍した野球評論家の野口寿浩氏が予想した。

 オリックスは昨季、2位に15.5ゲームの大差をつけてゴールテープを切ったが、先発投手陣から昨季16勝で最多勝の山本と、11勝の山崎福が抜け、計27勝が消えたのはさすがに痛い。

 しかし、野口氏は「オリックスというチームは、投手に関しては、誰かが抜けても誰かが出てくる。考えてみれば昨季、新人王を獲得した山下舜平大(投手)はシーズンの半分いなかった。6勝0敗の東(晃平投手)も半分いなかった。田嶋(大樹投手)も故障がちで3分の1はいなかった。椋木蓮(投手)は育成契約で1年間いなかった。それがみんな帰ってきてごらんなさいよ、という話ですよ」と指摘する。

 確かに、山下は昨季9勝も、腰の張りで8月26日がシーズン最終登板となった。東は逆に、先発陣に加わったのが夏場の7月30日からで、無傷の6勝。2人とも“実質2年目”の今季は、さらなる成長が見込まれている。2022年にトミー・ジョン手術を受け、昨季は育成選手として過ごした椋木も、今月13日に支配下選手に復帰し大いに期待されている。

 山本には連敗中などチームの苦境でこそ力を発揮する、数字以上の頼もしさもあったが、野口氏は「そういう意味で、今季は宮城(大弥投手)が覚醒するのではないか。気持ちで投げられるタイプだけに、大エースになるのではないかという気がします」と言う。

 打線も「西川(龍馬外野手)を国内FAで広島から獲得し、頓宮(裕真捕手)、森(友哉捕手)と合わせてクリーンアップが固まった」と死角なし。「昨季のように突っ走ることはないと思います」としながらも、今年も優勝候補の最右翼に挙げる。

先発陣充実の西武は得点力課題もアギラー、コルデロ、ブランドンらに期待

 西武から本塁打王3度の山川穂高内野手を獲得したソフトバンクのチーム力も、オリックスに引けを取らない。「打線はパ・リーグナンバーワンでしょう。もともと昨季本塁打・打点2冠の近藤(健介外野手)、柳田(悠岐外野手)がいるところに、山川、(アダム・)ウォーカー(外野手=前巨人)が加入し、いったいどれだけホームランを打つんだよ、という感じではないですか。栗原(陵矢内野手)が怪我から復帰しているのも地味に大きい」と評する。

 アキレス腱があるとすれば、「これまで絶対的なセットアッパーとして機能してきた(リバン・)モイネロ(投手)が先発に転向すること」と野口氏。「“先発は厚くなったけれど、リリーフでモイネロの抜けた穴が埋まらなかった”という結果にならなければいいのですが……。成長著しい杉山(一樹投手)、藤井(皓哉投手)らがモイネロ並みの働きをできるかどうか」とキーポイントを指摘した。

 オリックスとソフトバンクが“2強”の様相だが、野口氏が「オープン戦を見ていて、その2強に割って入る力をつけたチームが1つあると、僕は思いました」と強調するのが、先発投手陣の充実ぶりが抜群の西武である。

 高橋光成投手は少し出遅れるが、初の開幕投手を務める今井達也投手、平良海馬投手、松本航投手、隅田知一郎投手ら、20台中盤の“脂の乗った”好投手がズラリ。ドラフト1位ルーキー左腕の武内夏暉投手(国学院大出身)も、レベルの高い先発ローテの一角を占める。

 山川が抜けて懸念されていた打線の得点力も、「新外国人の(ヘスス・)アギラー(内野手)、(フランチー・)コルデロ(外野手)が結構打てそうです」。さらに「ブランドン(内野手)が“本格化”しそう。若林(楽人外野手)の復調も大きい」と高く見積もっている。

 プロ4年目のブランドンは、もともと将来性を高く評価されていたが、故障がちで昨季オフにいったん戦力外通告を受け、育成選手として再契約。これで尻に火がつき、今年のオープン戦で打率.333(24打数8安打)と活躍し、支配下復帰を勝ち取った。一方、若林はプロ1年目の2021年、5月までに20盗塁を量産しタイトル争いで独走していたが、不運にも左膝前十字靭帯損傷の重傷を負った。靭帯再建術を経て、ここにきてようやく本来のスピードを取り戻しつつある。

世代交代期の楽天は「今年1年間若手を起用し、来年勝負」も“あり”?

 今江敏晃監督1年目の楽天について、野口氏は「今年1年間は、監督が使いたい若手をどんどん起用して成長を促し、来年勝負という考え方も“あり”ではないか」と提言する。それほど、経験値は低いものの楽しみな若手が多い。野手では黒川史陽内野手、吉野創士外野手、ドラフト6位ルーキーの中島大輔外野手(青学大出身)、投手ではドラフト1位の古謝樹投手(桐蔭横浜大出身)、内星龍投手、藤井聖投手、育成選手ながら最速161キロを誇る清宮(せいみや)虎多朗投手らの名前を挙げる。

 世代交代期にさしかかっているのは間違いなさそうで、予想はBクラスの4位としたが、「昨季もチーム盗塁数(102)は12球団ダントツで、チーム打率(リーグ3位の.244)も、島内(宏明外野手)が絶不調だった割には悪くなかった」と指摘。「若手の成長とベテランの調子がかみ合えば、優勝の可能性もないわけではない」と付け加えた。

 5位予想のロッテは「佐々木朗希(投手)が1年間離脱せずに投げられるかどうか」。上沢直之投手がメジャー挑戦のために抜けて最下位予想の日本ハムも、「リリーフの田中正義(投手)、杉浦(稔大投手)が好調で、身長190センチの大器で育成から支配下に昇格した福島(蓮投手)も楽しみです」と、上位進出の可能性を感じ取っている。

「間違いなく混戦。例年以上に予想が難しい」と野口氏は嘆くが、新戦力や成長途上の若手が多い分、ファンにとっては最後まで楽しめるシーズンになりそうだ。

【順位一覧】
1位 オリックス
2位 ソフトバンク
3位 西武
4位 楽天
5位 ロッテ
6位 日本ハム(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)