田宮は初の開幕1軍で先発マスク…新庄政権初の初戦白星に導いた

 開幕カードを勝ち越した日本ハムで、高卒6年目・田宮裕涼捕手の存在感が増している。初の開幕1軍入りを果たすと、全3試合にフル出場。実は新庄剛志監督は、大事なシーズン初戦のマスクを託すことを2月中旬から決めていたのだという。正捕手奪取が期待される23歳の魅力とはーー。

 3月29日、監督となって初めての開幕勝利に沸いたZOZOマリンスタジアムで、新庄監督が明かした。「キャンプの中盤から田宮君で行こうと決めていた。彼が僕の思うような活躍をしてくれて。(開幕スタメンを)掴んだということですね」。先発の伊藤を好リードし、打っては2打数2安打1打点。大一番で期待に応えた若武者の姿が心底うれしそうだった。

 2018年にドラフト6位で成田高から入団した田宮は、2020年に初出場。しかし2022年に14試合に出場したのが自身最多と、ここまで決して結果を残してきたとは言えない。昨季は9月22日にようやく1軍に初昇格。しかしそこから出場はわずか10試合ながら、楽天・田中将大投手からプロ初アーチを放つなど片鱗をのぞかせていた。

 指揮官は「俺、1年目から田宮君は期待していた。ただ右肘に爆弾抱えていたから……。まだまだちょっと時間がかかるのかなと思って」と明かす。右肘の不調は自慢の強肩にも影響を及ぼし、打撃の状態もなかなか上がらなかった。

 それが「本人、昨年なにかのマシーンが導入されて、一気に肘が良くなって。それで昨年後半、2軍で成績を出していなかったんですけどちょっと呼ぼうって。使ってみたら凄いボールを投げ出して『あ、これは面白い』と」。“ゆあビーム”と称される肩を武器に、少ないチャンスを逃さなかった。

 チームの捕手事情を見れば、昨季の先発マスクは伏見寅威の74試合が最多、アリエル・マルティネスが29試合、清水優心が14試合と続き、田宮は5試合にとどまった。それが今季は開幕3試合でスタメンマスクを被り、打率.500(8打数4安打)、2打点、1盗塁。課題だった下位打線で結果を残し、30日は佐々木朗希投手相手に2打席無安打ながら計17球粘るなど、貴重な働きを見せている。

「ここからは経験。自分が掴むか、掴まないか」と新庄監督は“その時”を待つ。「まずは守備を第一に。あと打って走る、捕手で全部やっている人はなかなかいないので、そういう捕手になっていきたいと思います」と目を輝かせた田宮。万波中正外野手や野村佑希内野手らと同期入団。遅れてきたスター候補生に、ついにスポットライトが当たり始めた。(町田利衣 / Rie Machida)