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2024年もすでに2カ月が経ちました。

今年も多くの新作映画が公開される予定です。さらに、3月にはアカデミー賞の発表も控えています。

今回は、オスカーノミネート作品やついに公開となる話題作など、2024年前半に公開される注目の新作映画8作品を紹介していきますよ。

<目次>

1. 『哀れなるものたち』

2. 『ボーはおそれている』

3. 『落下の解剖学』

4. 『アメリカン・フィクション』

5. 『デューン 砂の惑星 PART2』

6. 『オッペンハイマー』

7. 『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

8. 『関心領域』

『哀れなるものたち』

劇場公開日:2024年1月26日

監督:ヨルゴス・ランティモス

出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー ほか

ストーリー

とある自殺した若い妊婦。彼女は天才外科医によって胎児の脳と入れ替えられることによってベラとして蘇る。「身体は大人、頭脳は子ども」となったベラは無垢な視点で詐欺師のような男と世界を巡る旅に出る。その目に映る世界とは、人間とは感情とは、そして自分とはを問い、少しずつ成長していくベラの姿を描く奇妙なヒューマンドラマ。

見どころ

無垢が故に人を振り回し、人に翻弄されるベラを演じる主演のエマ・ストーンの熱演と監督のヨルゴス・ランティモスが描く何とも不可思議な世界に魅了されます。斜めからのアングルや魚眼レンズのような画角など映像としてのおもしろさもあります。

また、美術や造形、美しくも不穏な音楽など、『カリガリ博士』といったドイツ表現主義に影響を受けたようなレトロながら印象に残る演出も今作のポイントといえるでしょう。

ベネチア国際映画祭やゴールデングローブ賞での受賞のほか、アカデミー賞でも作品賞など11部門にノミネートされています。

『ボーはおそれている』

劇場公開日:2024年2月16日

監督・脚本:アリ・アスター

出演:ホアキン・フェニックス、パティ・ルポーン、パーカー・ポージー ほか

ストーリー

強迫観念にかられる中年男性のボーは、帰省するために母に電話をした次の日にその死を告げられる。母の死を信じられないボーは居ても立ってもいられず家を出るが、世界はすでにいつもの日常ではなくなっていた。過去か未来か、夢か現実かもわからない旅の中で真実が浮き彫りになっていく。

見どころ

これまで『ヘレディタリー 継承』『ミッドサマー』と話題作を撮ってきたアリ・アスター監督の狂気じみた世界観は今回もちゃんと打ち出されています。個人的には、これまでで1番"正気"な作品とも感じられました。ボーを演じるホアキン・フェニックスの安定の名演により、ヤバさだけではない世界に仕上がっているように思います。

『落下の解剖学』

劇場公開日:2024年2月23日

監督:ジュスティーヌ・トリエ

出演:サンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール ほか

ストーリー

雪山の山荘の3階から男性が落下して死亡。妻は別の部屋で寝ていて、息子がそれを見つける。転落による事故死を思われたその死は、次第に妻に疑いがかかるように。過去の事故により視力が低下した息子と夫とのいさかいがあった妻。さらに裁判が進むに連れて明らかになる秘密が残された母子をどのような運命に導くのか...といったサスペンスドラマ。

見どころ

男性の死から、実況見分や報道といった視点を通して裁判の行く末や過去・現在が映り変わっていく演出が素晴らしく、とてもリアルに感じられます。また、妻を演じるサンドラ・ヒュラーはもちろん、息子を演じるミロ・マシャド・グラネールの表現力が凄まじいです。

カンヌ国際映画祭での受賞やアカデミー賞でも作品賞や主演女優賞など5部門にノミネートされている本作。上質なサスペンスと家族のドラマがいい具合に混じり合う作品です。

『アメリカン・フィクション』

配信開始日:2024年2月27日

監督:コード・ジェファーソン

出演:ジェフリー・ライト、スターリング・K・ブラウン、エリカ・アレクサンダー、イッサ・レイ ほか

配信:Amazonプライムビデオ

ストーリー

スランプ気味の作家のセロニアス・"モンク"・エリソンは、ある日典型的な貧民街の黒人を描いた作品がヒットしていることを知る。出版社にも「もっと黒人としての体験を入れ込んでくれ」と言われ、冗談と皮肉交じりにスタッグ・R・リーという名前で暴力や薬物が横行する黒人の物語を書く。が、その作品はあれよあれよとベストセラーとなってしまい、不本意なかたちで名声を得てしまう...というコメディベースのヒューマンドラマ。

見どころ

今回の作品で唯一日本での劇場公開予定はなく、Amazonプライムビデオでの配信作品です。配信は2月27日から開始していますよ。

コメディとして笑える部分も多く、一方でシリアスなシーンはより一層突き刺さるものになっているも素晴らしいです。

多様性を謳う一方で実は型にはめようとしているかもしれない、現代日本に生きる私たちにも深く考えさせられる作品です。あらゆるマーケティングに使うためにトレンド化や形骸化されたものを、再度見つめ直し深く考えるべきなのかもしれないとも感じました。

『デューン 砂の惑星 PART2』

劇場公開日:2024年3月15日

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

出演:ティモシー・シャラメ ゼンデイヤ レベッカ・ファーガソン フローレンス・ピュー レア・セドゥ ほか

ストーリー

前作『デューン 砂の惑星』の続編となる壮大なSF作品。惑星間国家が支配するようなはるか未来。砂の惑星・デューンを舞台に別の一族と戦った主人公のポール・アトレイデス。今作では新たな強敵とより一層スケールの大きい戦いを強いられることに。前作より大きな存在となったポールが進み導く宇宙の運命とは...という超スペクタクル作品です。

見どころ

前作でCGやアクションによってとんでもないスケールの創造力を発揮したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による映像表現がさらに強化されていることに期待ですね。

また、新たに登場するキャラクターによってポールやチャニ(ゼンデイヤ)がどのように成長するか、そしてもちろんストーリー全体がどのように展開していくかや新たに明かされる秘密はなにか、といったところも注目です。

昨年から公開延期されて待ちに待った作品ということもあり、かなり期待してしまいます。

『オッペンハイマー』

劇場公開日:2024年3月29日

監督・脚本:クリストファー・ノーラン

出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr ほか

ストーリー

世界で初めて原子爆弾を開発し「原爆の父」として広く知られるロバート・オッペンハイマーの生涯を描く伝記映画。1950年代にオッペンハイマーは機密情報漏えいの疑いにより公聴会で追及を受けていた。ブラックホールの研究、妻との出会い、原子爆弾の可能性、そしてその開発、そうした過去が語られ、オッペンハイマーの栄光と凋落を描く。

見どころ

日本人にとってセンシティブな題材であることは間違いなく、日本での公開は長らく未定でしたが、2024年の3月に公開することが決定しました。

公聴会から始まり、過去と現在を往復しつつ流れていくようにオッペンハイマーの人生ととその精神が移り変わっていく様はクリストファー・ノーラン監督の流石の手腕と感じます。好奇心や熱意が次第に不安や後悔に変わっていくような感情の捉え方、それを映し出す映像表現は素晴らしいものです。

オッペンハイマーが核兵器をどのように作り、その結果どうなったのかが3時間の映画の中で詳細に語られることで、改めて歴史が繰り返されてはならないという思いを深く感じました。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

劇場公開日:2024年4月26日

監督:アダム・ウィンガード

出演:レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ダン・スティーヴンス ほか

ストーリー

『ゴジラvsコング』の続編であるモンスターSF作品。前作で激しい戦いを見せたゴジラとコング。今回は地下に存在するコング型モンスターが率いる集団が登場します。この新たな敵に対抗するべくゴジラとコングが共闘することが示唆されています。

見どころ

本作は、有名モンスターたちが同一の世界を共有する「モンスターバース」シリーズの新作です。これまでのシリーズで語られていなかった歴史や謎が紐解かれる可能性もあるとのこと。また、新たなモンスターも気になるところですが、ゴジラやコングもさらに進化しているようなのでそのあたりも注目です。

『関心領域』

劇場公開日:2024年5月24日

監督:ジョナサン・グレイザー

出演:クリスティアン・フリーデル サンドラ・ヒュラー ほか

ストーリー

清潔感のある大きな家に住むヘス一家。手入れされた芝生が敷き詰められた庭園には、花や野菜がたくさん植えられ、近くの森や川では子どもたちが遊んでいる。アッパーミドルクラスの温かい家庭の平穏な暮らし。子ども想いの父と肝っ玉母さんとわんぱくな子どもたちが笑う庭園の横には、端から端まで高い塀が建てられていた。

見どころ

まず、ひとつ言えるのは、できることなら前情報をまったくなしで観たかった、ということです。この時代にそれは難しいかもしれませんが、せめてここには核心を省いた説明をさせていただければと思います。

さて、この作品は固定カメラの多用やセリフの少なさもあり、淡々と裕福な家庭の何気ない風景を覗き見しているような演出が光ります。それが徐々に奇妙に感じ始め、最終的に多くの示唆に富んだ作品になっていくのです。

また、『アンダー・ザ・スキン』のジョナサン・グレイザー監督(ジャミロクワイのあのMVのほうが有名かもしれませんが)らしい、予想外の映像表現や不穏な音楽も顕在で、意図して違和感を覚えるように初めから終わりまで設計されているように感じられて素晴らしいです。

カンヌ国際映画祭でのグランプリ受賞のほか、アカデミー賞でも作品賞ほか5部門にノミネートされている作品です。

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