円安の現在、日本人が海外に行く機会は以前より少なくなっているかもしれません。対照的に増えているのが外国人です。羽田や成田空港の到着ロビーには毎日毎日、キャリーケースを携行した大勢の訪日客の姿があります。来日の目的はさまざまですが、日本に憧れを持っている人も少なくありません。「渋谷に立っているだけで興奮します」と笑顔のフランス人、ポールさんに詳しい話を聞きました。

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「街路はきれいに清掃されていますし、人々も清潔です」

 パリから家族でやってきたポールさんは、「日本は欧州と違います」と断言します。

 古都・京都で感じた歴史の奥深さ。そして、対極的な東京の高層ビル群やテクノロジー。食事や文化、人々の所作まで、多くの刺激を得たそうです。

「街路はきれいに清掃されていますし、人々も清潔です。フランスとは違います」と話しました。

 一方で、渋谷を訪れたのは特別な理由がありました。

 日本では「若者の街」として知られ、世界的にはハリウッド映画にもなった忠犬ハチ公像、そしてスクランブル交差点が有名でしょう。

 スクランブル交差点は日本人からすれば何げない交差点に見えますが、海外では、ひとたび信号が変われば多いときで一度に数千人が一斉に往来する交差点として、驚きの対象となっています。スマートフォンやカメラで動画を撮影しながら珍しそうに歩く外国人の姿があります。

 ただ、ポールさんが渋谷に来た目的はそのどちらでもありませんでした。

「私は日本の文化に最も感銘を受けています。文化がユニークだと思います」

 特にフランスは欧州の中でも日本のアニメ・マンガ文化に造詣が深い国です。

「私はマンガを愛しています。世界で最もマンガが売れる国は日本。そして2位はフランスです。フランスには素晴らしいマンガ文化があります。『ONE PIECE』はとても有名です。『鬼滅の刃』や『SPY×FAMILY』、もちろん『ドラゴンボール』も。でも、ドラゴンボールはフランスではあまり知られていないです。一番有名なのは、『NARUTO -ナルト-』ですね。ナルトはネットフリックスにあるから。ナルトを見ている人はたくさんいます。フランスでマンガは本当にハイです」

アニメファンの視点では全く異なる渋谷の楽しみ方

 中でも、ポールさんの好きなマンガが「呪術廻戦」です。

「『呪術廻戦』を覚えていますか。私は『呪術廻戦』が大好きです。2日前にも読みました。渋谷編もアニメ化されました。たくさんの宣伝がありました。ここは渋谷です。私はここに立っているだけでうれしいです」と笑顔を見せました。

 渋谷は物語の中で闘いの舞台となる場所。「宿儺(すくな) VS 魔虚羅(まこら)の闘いがここで」「五条悟がここで封じ込められた」などと熱弁していました。

 呪術廻戦好きの視点で見ると、渋谷の風景はがらりと変わり、あちこちに“聖地”が現れます。駅前や地下、乗り換え通路、ホテル……。109やヒカリエのビルもショッピングするところではありません。アニメのシーンを思い出しながら、全く違う楽しみ方ができますね。

「明日は秋葉原に行く予定です。『ワンピース』のカードゲームを買います。パリにはないですから。コレクション用に保管します」と目を輝かせました。

Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム