更年期になると、ホルモンバランスの乱れなどで、さまざまな不快な症状が心身に現れることがあります。とくに女性は、エストロゲンの減少で骨がもろくなりやすく、骨折リスクが高まるので注意が必要です。骨の健康のために、どのような食事を心がけたら良いでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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更年期は女性ホルモンの減少で骨がもろくなる

 骨が作られるのは、子どもの頃の成長期だけというイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、骨の代謝は大人になってからも日々行われています。古い骨を溶かす役割を持つ「破骨細胞(はこつさいぼう)」と、骨を作る役割を持つ「骨芽細胞(こつがさいぼう)」の2つの働きで新陳代謝が行われ、骨は新しく生まれ変わっているのです。骨の健康を維持するためには、この骨の代謝が活発に行われることが大事になります。

 女性ホルモンであるエストロゲンには、骨芽細胞を活発にして骨形成を促すとともに、破骨細胞による骨吸収を抑制する働きがあります。このため、エストロゲンが減少すると骨の代謝がうまくいかず、骨がもろくなり骨密度が低下。ちょっとした転倒で骨折したり、骨粗しょう症のリスクが高まったりします。

 骨を丈夫にするためには、日光浴や適度な運動、睡眠など規則正しい生活を送ることが効果的だといわれています。そして、なにより体を作るもととなる食事も大切です。日頃から栄養バランスが整った食事を心がけ、骨の健康に役立つ栄養素を積極的に摂っていきましょう。

 骨の主成分はカルシウムです。カルシウムを含む食材としては、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品や、イワシやシラス、干しエビなど丸ごと食べられる小魚類、水菜や小松菜などの青菜類や切り干し大根、納豆や豆腐などの大豆製品が挙げられます。

カルシウムだけではない 骨を丈夫にする栄養素もプラス

 ただし、誤解されやすいのですが、骨を丈夫にするのはカルシウムだけではありません。骨の主成分であるカルシウムを助ける栄養素も必要になります。カルシウムは吸収されにくい特徴があり、牛乳でも約40%しか体内に吸収されません。骨を強くするためには、マグネシウム、リン、ビタミンD、ビタミンKの4つの存在も大切です。ひとつずつ紹介していきましょう。

骨の成分であるマグネシウムとリン

○マグネシウム
 カルシウムと同様、骨の成分です。骨の強化のほか、カルシウムと体内で拮抗しながら、筋肉の伸長や収縮、正常な血圧の維持などに関わるといわれています。摂取する理想の比率としては、カルシウム:マグネシウム=2:1で、カルシウムを多く摂るほど、マグネシウムは排泄されてしまいます。

 マグネシウムを多く含む食材は、ヒジキやワカメなどの海藻類、玄米や全粒粉パンなどの未精製の穀物、納豆や豆腐などの大豆食品、クルミなどのナッツ類です。マグネシウムは不足しがちな栄養素ですので、さまざまな食品から摂っていきましょう。

○リン
 カルシウム、マグネシウムと同様にリンは骨の成分です。骨の強化のほか、体液の浸透圧を保つなど、人体のさまざまな働きに関わっています。骨の成分であるものの、過剰に摂るとカルシウムの吸収を妨げる特徴があるので、摂りすぎに注意が必要です。

 現代の食事では、インスタント食品や加工食品などに添加物として多く含まれるので、通常は不足することがありません。むしろ過剰摂取にならないように気をつけましょう。

カルシウムの吸収を助けるビタミンDとビタミンK

○ビタミンD
 カルシウムの腸内での吸収率を助ける役割に期待。脂溶性のビタミンなので、油脂に溶けることで吸収率を上昇させます。油は、消化吸収が早く体脂肪として蓄積されにくいMCTオイルや、悪玉コレステロールを減少させ生活習慣病予防に期待できるといわれるオリーブオイルなどを用いると良いでしょう。

 食材としては、シラスやサケなどの魚類、マイタケやシイタケなどのキノコ類に含まれます。

○ビタミンK
 カルシウムを骨に吸着させて骨の形成を助ける役割があるといわれています。ビタミンと同じく脂溶性のビタミンです。血液を凝固させる働きも持ちます。

 食材としては、納豆、豆苗やブロッコリー、小松菜、ヒジキや海苔などの海藻類に含まれます。さまざまな食材に含まれるので、バランスの良い食生活をしていれば不足することはありません。

 骨の健康のためには、これら4つの栄養素とカルシウムを含む食材を上手に摂っていくことが大切です。たとえば、マグネシウムやビタミンKが多い納豆のトッピングに、シラスや桜エビ、もずくなどをチョイスすればカルシウムも補給できます。

 また、大豆製品には更年期の不調緩和が期待されるイソフラボンも含まれます。普段飲んでいるコーヒーや紅茶に、無調整の豆乳を入れてソイオレにしたり、ソイティーにしたりしていただくのも良いでしょう。

Hint-Pot編集部