タカラジェンヌを養成する宝塚音楽学校(兵庫県宝塚市、中西達也校長)で19日、第112期生の入学式が開かれた。新入学生40人は今後2年間、歌、芝居、ダンス、日本舞踊などの基礎を学び、2026年の初舞台を目指す。

 卒業後に入団する宝塚歌劇団は昨年9月に宙組娘役・Aさん(享年25)が転落死した。歌劇団はAさんに対する上級生の14項目のいじめ・パワハラを認め、3月に遺族側と合意書を締結したが、6月20日の宙組公演再開決定も「時期尚早」などの声が上がっており、今も揺れ続けている。

 式典には歌劇団の村上浩爾理事長も登壇した。40人やその保護者に向けて、「これまで本当に不安の思いや心配がいろいろあったと思いますけれども、そのような状況でも皆さんは『なんとしても宝塚歌劇に入りたい』という熱意を持って頑張ってきたと思います。努力の積み重ねの結果、合格され、本当におめでとうございます。また、ご家族の皆様もその思いを受け止めていただき、本当に感謝しています」と、笑顔を見せながらあいさつした。

 スピーチでは「2点お伝えしたいことがあります」と前置きし、「まずは、入学できたことについては本当に誇りと自信を持ってほしい。ただ謙虚な真っ白な気持ちを決して忘れないよう慢心することないように。長い芸の道の入口に立ったに過ぎません。今後の道のりは長く険しく、大変で終わりはないと思いますけれども、一人の人としてもしっかり生きてほしい」と激励した。

 さらに、Aさんの事件後の取り組みについて語った。村上理事長は「歌劇団では様々な改革、改善に取り組んでおります。舞台を安全に遂行するために必要なルールや慣習がございますが、中には古くから伝統や慣習が積み重なり、非合理的、過剰な負担、気遣いを生じているものもあります。これからは時代に合わせて見直し、アップデートしようとしていますし、開始しております」と説明した。

 村上理事長は昨年12月1日付け音楽学校の理事長と兼務に。「歌劇団と音楽学校がより連携して環境を構築し、後戻りしない」と決意を述べた上で「皆様も決められたルールに従うだけではなく、少しでも自立していき、自らが考えてどう判断していくかも大切と思っています。学校への疑問点や意見、質問があれば、決して遠慮することなく、ぜひ一人で抱え過ぎることなく、もちろん考えた上で相談・質問してほしいと思います」と生徒の自主性の向上を促した。