今季限りでの現役引退を発表したフランクフルトの元日本代表MF長谷部誠(40)について、14年ブラジルW杯で日本代表を指揮したアルベルト・ザッケローニ元監督(71)が18日、スポーツ報知の独占インタビューに応じた。主将を託した長谷部を「パーフェクトな息子」と表し、感謝と愛を語った。(取材・倉石 千種)

 強い絆で結ばれた長谷部の引退に、ザッケローニ氏の言葉には、惜しみない愛がにじんだ。

 「僕の知っている長谷部は、決して途絶えることなく、一生付き合っていきたい人物だ。サッカーの世界の人間としても、スポーツ界の人物としても、彼は完璧な人だ。とても有益な、人の役に立つ人物。漫画の主人公になるべき人物。ピッチでもバランスの取れた人で、カリスマ性があり、賢い。ロッカールームでは、彼がいてくれることは幸運だ。清廉潔白で、無欠、真の男」

 ACミラン、インテルなどイタリアの名門クラブを指揮した経験を買われ、10年8月に日本代表監督就任。前線には本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、中盤には遠藤保仁らを擁した攻撃的なチームを作り上げ、14年ブラジルW杯の出場権を獲得した。その中心が、主将を託し、ボランチとしてレギュラーに据え続けた長谷部だった。

 「僕の日本代表が結果を得られたのは、彼がいたから。なくてはならない基盤となった選手だった。僕にとって彼はパーフェクトな息子。選手みんなにこんなことは言わないよ。でも彼には言える。教育の模範になるような漫画の主人公が、現実に現れて、出てきたようだ。常に建設的な考え方で、ネガティブな考えはない。僕のチームに彼がいたのは、幸運だった」

 ブラジルW杯では1次リーグ敗退と結果を残せず、ザックは大会後、日本代表を去る。日本を離れる際、内田篤人らとともに空港まで見送りに来てくれたことも忘れていない。

 「僕の日本代表のロッカールームは、すべてがパーフェクトに機能していた。なぜなら彼がいたからだ。素晴らしい並外れた人物だ。僕は彼を崇拝していたが、全てのチームメイトたちも、敬愛していた。他のために常に消耗し、尽くしていた。礼儀正しく、賢い。監督として、こういう選手を持てて幸運だった。多くのことを彼が解決してくれていた。僕に言わないで、解決してくれたこともあった。僕は、パーフェクトな息子のように、とても深い情愛の絆を感じている」

 そして引退し、新たなステージに進む“息子”に、さらなる期待も寄せた。

 「彼がサッカーを辞めても、止まっている人には見えない。彼のパーソナリティーを、今後も活かして欲しい」

 日本サッカー協会を通じて発表したコメントでも「イタリアの我が家はいつでもあなたを歓迎します。近いうちにお会いしましょう。セカンドキャリアでの成功も祈っています」とつづった。選手と監督という関係は終わっても、ふたりの“縁”が途切れることはない。