◆JERA セ・リーグ 巨人8―5阪神(3日・東京ドーム)

 巨人が、球団創設90周年記念特別試合「長嶋茂雄DAY」として開催された阪神戦を制した。初回2死無走者から、坂本勇人内野手(35)の先制打などで一挙4得点。2回には岡本和真内野手(27)の5号2ランで加点した。坂本は5回に二塁打、8回に安打を放ち、プロ野球歴代3位のミスターに並ぶ通算186度目の猛打賞。来場した長嶋茂雄終身名誉監督(88)=報知新聞社客員=にゆかりのある面々が奮起し、連敗を3で止め、首位とのゲーム差を「2」とした。

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 長嶋終身名誉監督が東京Dにサプライズ登場した。野球界、日本スポーツ界をけん引したミスターの功績をたたえるメモリアルな一戦。5回裏終了時、「4番・サード 長嶋」のアナウンスで現れると、「長嶋」の大合唱がこだました。

 緊張気味だったが頬が一気に緩んだ。それもそのはず。来場に合わせたかのような打線の復調ぶりで、G党の盛り上がりは最高潮に達した。阿部監督、松井氏とともにホームベース付近に並び「こんなにうれしいことはない。巨人ファンの声援が本当にすごくて、今日は元気をもらいました。巨人打線もこれから、もっと元気になるよ」と、興奮気味に約束した。

 永久欠番「3」の復活。創立90周年にふさわしく、ファンを魅了し続けた背番号を身につけ、選手がグラウンドでうっぷんを晴らした。右袖にデザインされた特別仕様のユニホームで初回から猛打爆発。「そろそろ目覚める時だと思っていたよ。坂本も下半身を粘り強く使っていい打ち方をしたな」と、左手でOKサインを作った。8回に自身の記録に並び、「186度目の猛打賞? 私に並んだのか。えっへっへ。主役が打てばチームは勝つんだよ」。2回、岡本和の一撃にも左手を上げて「おー、行ったあ〜」とガッツポーズ。「懐を広く取れて間も良かった。岡本は間違いなく上がってくる。引っ張ってくれよ〜」と願った。

 打てない日々とおさらばか。開幕以降、時にいら立ちも見せたミスターだったが、こんな見方もしていた。

 「阿部監督は先を見据えて戦っている。見ていれば分かる。辛抱する時もあれば、思い切り行くタイミングも見計らっている。誰が使えるのか。力になってくれるのか。エンジン全開は夏過ぎ頃だろう。最後に優勝していればいいんだよ。阿部監督は冷静だよ」

 ミスターの記念日で快勝劇。“持ってる”男の登場が起爆剤になったことは間違いない。場内を見渡しても「長嶋Tシャツ」を着たファンの笑顔が印象的。長嶋さんは「楽しい一日でした」と感謝した。「もう大丈夫。巨人は大丈夫」。自身に言い聞かせるようだった。(水井 基博)

 ◆長嶋茂雄さんのコメント全文 「読売巨人軍は本年、球団創立90年を迎えました。ご観戦の皆様、全国の野球ファンの方々と共に心から祝福したいと思います。1世紀に近い年月の中、多くの先輩、同輩、そして若い世代の人たちに支えられて築かれた球団の歴史です。私も巨人に入団して半世紀を過ぎました。自分自身の足跡を振り返っても、様々な喜怒哀楽が詰め込まれています。今シーズンは阿部監督のもと、レギュラーを死守するベテランとチャンスを狙う中堅、さらに若手を含めた戦う集団です。創立90年の年、巨人が日本一の座を目指す戦いを見せてくれると期待しています」