◆JERA セ・リーグ 巨人2×―1阪神=延長10回=(4日・東京ドーム)

 巨人が阪神との死闘を制し、カード勝ち越しを決めた。1―1で迎えた延長10回1死満塁、吉川尚輝内野手(29)が前進守備の二遊間を破る一打を放ち、チームを今季2度目のサヨナラ勝ちに導いた。吉川の劇打は22年7月6日のヤクルト戦(東京D)以来、自身4度目。先発・菅野智之投手(34)が7回6安打1失点の力投。9回に3番手でマウンドに上がった西舘勇陽投手(22)も1回無失点。1点を追う8回には丸佳浩外野手(35)が同点適時打と存在感を発揮し、首位・阪神にゲーム差1に迫った。

 執念が詰まった白球が中前へと抜けていくと大歓声が湧き起こった。G党が狂喜乱舞する中、吉川は右拳を突き上げた。延長10回サヨナラ勝ち。一塁ベースを回り両手を掲げて待つ背番号2に歓喜のウォーターシャワーが降り注がれた。「もう抜けろと思って走ってました。勝ったのでそれが一番です」。お立ち台で喜びを口にし、鳴りやまない「尚輝コール」の余韻に浸った。

 延長10回1死満塁。初球は島本のボール気味の変化球に空を切った。ここで切り替えた。心は熱く、頭は冷静に。「何とかするしかない。自信を持って振りにいく勇気を持つ」。バットを少し短く持ち1ストライクからの2球目、内角低めの直球をコンパクトに振り抜いた。昨秋から打撃改造するも開幕から打率2割台前半と低迷。二岡ヘッド兼打撃チーフコーチと「フォームの無駄を省いて、確率を上げたい」と取り組んだ打法が実を結び、打球は遊撃手・木浪の左をわずかに破り、自身4度目の劇打に。直近10試合で37打数12安打、打率3割2分4厘。徐々に明るい兆しが見えてきた。

 同じ失敗はできなかった。同点の8回1死一、三塁では捕邪飛。冷静さを欠き、バットを振り回した。「めちゃくちゃ悔しかった。10回は何とかバットに当てればと思っていた」。反省を生かしたことが最高のフィナーレにつながったが、阿部監督は期待しているからこそヒーローに手厳しかった。「決めたのはすばらしい」とした上で、「最後はホームランを打たなくてもいいところだし、工夫が早めにできなかったから前の打席(8回)に打てなかったと見ているし、工夫があってこそ見ている側は納得する。人に見える工夫をしてほしい」。喜びつつ、発破をかけた。

 昨秋に大きな転機があった。遊撃を務めていた坂本が三塁へコンバート。遊撃は年下の門脇が務めることになり、責任感がより大きくなった。「僕は坂本さんにたくさん助けられてやってきたので、二遊間を組む時は何かしら助けになればと思っているし、コミュニケーションを取っていければ」。普段の練習から積極的に声をかけることを忘れない。門脇は「尚輝さんが隣にいてくれてうれしい」と信頼する。8年目の今季は頼もしくチームを支えている。

 ゴールデンウィークで子どもたちが訪れる中、2連勝。吉川は「田舎だったから遠くて試合を見に行けなかった」と幼少期を振り返りつつ、「勝って喜んでもらえた」と笑った。首位・阪神に1ゲーム差に迫り、「次も勝てるように頑張りたい」。たくましさを増す背番号2とともに、さらに上昇する。(宮内 孝太)

◆東京ドームの阪神戦 もう昨季超え4勝

 巨人は延長10回に吉川の安打でサヨナラ勝ち。昨年は3勝8敗1分けだった本拠地・東京Dでの阪神戦に、これで今年は○○●○○の4勝1敗だ。

 吉川のサヨナラ安打は

 年・月・日  相手  =結果

20・9・01 D 9回=[安]

   9・22 広 9回=[安]

22・7・06 ヤ10回=[二]

24・5・04 神10回=[安]

 4本目。20年のDeNA戦はエスコバー、広島戦はフランスア、22年のヤクルト戦は田口、そして今年も阪神の島本と全て左投手から記録している。

 サヨナラ安打は10回の1死満塁から。試合前まで延長回での通算成績は、24打数2安打の打率.083。満塁でも42―8で.190だった。特に今年は(K…三振、B…四球、犠…犠飛)

延長回=KBK×B[安]、満塁=犠×××[安]。延長回では6打席目、満塁では5打席目で打ったシーズン初安打が、劇的な一打となった。(阿部 大和)