◆サッカー男子パリ五輪アジア最終予選兼U―23アジア杯 決勝 日本1ー0ウズベキスタン(3日・ドーハ)

 【ドーハ(カタール)3日=後藤亮太】8大会連続12度目の五輪出場を決めている日本が、2016年以来4大会ぶりにアジアの頂点に立った。0―0の後半アディショナルタイム(AT)に途中出場のFW山田楓喜(ふうき、22)=東京V=が左足で先制点を決めると、直後のPKをGK小久保玲央ブライアン(23)=ベンフィカ=が阻止し、王座を奪還した。パリ五輪のサッカー男子は7月24日に開幕。優勝した日本は1次リーグでパラグアイ、マリ、イスラエルと同じD組に入った。

 大岩ジャパンの歓喜の雄たけびが、ドーハの夜空に響いた。4大会ぶりの優勝カップを前にした記念撮影を終えると、大岩剛監督(51)は選手たちから水をかけられ、表情を崩した。ウズベキスタンを破り、「非常に厳しい試合で選手たちが非常によく頑張ってくれた」とたたえた。

 ドラマは、0―0で突入した後半ATに凝縮されていた。目安で11分もあった。同AT1分、DF高井が中央でボールを奪ってヒールパス。藤田、荒木と素早くつなぎ、最後は山田楓が左足で鮮やかなミドルシュートを決めた。今大会5戦無失点だった相手のゴールをこじ開け、「試合を決める左足を自分が持っているのは分かっていた。それを出すために準備してきたので『当然だな』という感じ」。均衡を破る一撃で試合は決まったかと思われたが、“終演”はまだ先だった。

 直後にDF関根がハンドでPKを与えた。今度はGK小久保が主役として立ちはだかり、チームを危機から救った。普段から明るい性格で場を和ませる守護神を、仲間は信じた。「あまり自信はなくても『絶対に(小久保)ブライアンなら止められる』と。いろんな選手からの言葉を信じて跳べた」。ベンチから浜野GKコーチも手で指示を出していた右へ横っ跳びして完璧なセーブ。「感情的にグッとくるものがあった」。1点のリードを死守すると、アジア制覇が視野に入り、試合終了前から涙が止まらなくなった。

 試合スタッツではボール支配率「48%―52%」、シュート数「8本(枠内2)―18本(枠内5)」など数字上では劣勢でも、勝負に勝った。大岩監督も「不格好かもしれないですけど、決勝戦はこういうもの」と言った。終盤にかけて複数人が足をつった相手に対し、日本は途中交代で流れを変えて勝ちきった。

 2年前にU―23アジア杯準決勝で敗れた雪辱も果たした。「全員で戦ってきたので、大いに喜んでパリ五輪に向かいたい」と指揮官。今年の漢字「一文字」にしたためたのは「輪」だった。一枚岩となった大岩ジャパンが手にした栄冠。アジア王者として真夏の大舞台に挑む。