第106回全国高校野球選手権静岡大会(試合は7月6日から)の組み合わせ抽選会が22日、焼津市内で行われた。昨年センバツに出場した常葉大菊川は今夏はノーシードから2018年以来となる夏優勝を狙う。初戦は甲子園出場歴がある実力校・静岡学園(6日)、勝てば2回戦(13日)で昨夏Vの浜松開誠館が待ち受ける激戦ブロックに入った。選手宣誓は清水桜が丘の小笠原蒼悟主将(3年)が希望校による抽選で当選、開会式は30日に草薙球場で行われる。

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 常葉大菊川の山下結風主将(3年)は客席からのどよめきが起こる中、視線を貼り出されている組み合わせボードの右下の端に向けた。2回戦には春県3位でシード枠に入った浜松開誠館が控えていた。「どこが来ても一緒」との心構えで臨んでいたため、動じることはなかった。

 浜松開誠館とは昨春県大会の3位決定戦で対戦し、3―2で勝利した。山下はリリーフで登板。当時の印象を「投手、打者ともに個人の能力が高い」と振り返った。だが「自分の代は結果を残してない。開誠館に勝った時は周りが『おっ』となると思う」とニヤリ、“番狂わせ”を起こす気合は十分だ。

 昨秋4強の聖隷クリストファーもいる激戦ブロックとなった。春夏合わせて11度甲子園に出場しセンバツ優勝経験もある強豪校だが、今春は県初戦(2回戦)で東海大静岡翔洋に敗戦。挑戦者の気持ちだ。「能力がないので分かっている。夏は温存も考えず、最初から全力で臨む」と、意気込む。

 チームの調子は上向きだ。主軸の鈴木来空一塁手(3年)が春大会後から復帰し、打線が活性化。また腰の違和感により長期離脱していたエースの久保綾哉投手(3年)も夏に加わる。「走塁面など、隙を突く野球も鍛えてきた」と山下主将は話した。

 常葉大菊川は2016年にノーシードから優勝した経験がある。近年の甲子園出場はヤクルトのドラフト4位・鈴木叶捕手(18)を擁していた昨春センバツだ。その際、山下は補助員としてチームに帯同した。「先輩が楽しそうに試合をしていた。自分もあの地で活躍することができれば」。聖地を今度は選手として踏むと誓った。(伊藤 明日香)

 〇…昨夏甲子園も経験した浜松開誠館主将の加藤蔵乃介一塁手(3年)は「初戦に常葉大菊川がくる可能性がある。一番当たりたくないところと当たってしまう」と苦笑まじりに素直な気持ちを口にした。「やることをやるだけ。ここに勝てば勢いに乗れる」と前向きに捉えていた。目標は「2年連続の甲子園」。3年生の左腕エース松井隆聖ら3本柱を「最少失点に抑えてくれる」と信頼する。打線も練習試合で長打量産と好調だ。「新基準バットでも変わらない開誠館の打撃を見せていきたい」と意気込んでいた。

 〇…実力校の聖隷クリストファーと島田商が初戦でぶつかる。昨夏の4回戦、同秋の県3回戦でも当たっており、聖隷が2連勝中。島商・松永大翔主将(3年)は「リベンジできるチャンス。やってやろう、と思いました」と闘志満々。一方の聖隷・井上侑主将(3年)は「2回とも接戦。夏は何が起こるか分からない」と気を引き締め直した。

 〇…お互いに部員不足で昨秋・今春と合同チームを組んできた熱海と裾野が、いきなり初戦で当たる。4月まで一緒に練習していた仲で「ビックリしました。知っている選手と戦うのは楽しみ」と熱海・矢吹諺主将(3年)。裾野・飯塚蒼太主将(3年)は「運命かな、と思いました。やるからには勝ちたい」と必勝を誓った。

 川根・真鍋彰汰主将(春16強でシード枠。島田商と聖隷クリストファー戦の勝者と対戦)「どちらも強い高校。正直、うわっと思ってしまった。厳しい戦いになるが、小技など自分たちの野球で勝っていきたい」

 佐久間・赤石颯飛主将(6年ぶりに単独チームで出場)「町の人も応援してくれている。夏1勝を挙げて盛り上げたい」

 清水桜が丘・小笠原蒼悟主将(抽選で選手宣誓役に決まり)「108校の代表として気が引き締まる思い。周囲への感謝を伝えたい」

 ◆静岡大会展望 昨夏甲子園出場の浜松開誠館は松井隆聖投手(3年)らの投手3本柱に、強力打線で優勢かと思われたが強豪の多いブロックに入った。昨秋Vの藤枝明誠、プロ注目、県内歴代高校生最速タイ152キロ右腕の小船翼投手(3年)を擁する知徳もいる。春県Vの加藤学園は鍛えてきた小技、走塁で「接戦で粘れる野球をする」と小室太陽主将(3年)。春準Vの静岡は堅守が魅力。松下球真主将(3年)は「春にミスで負けたので磨きをかけてきた」と抜かりない。春4強の東海大静岡翔洋も昨夏準優勝の悔しさを晴らしたい。