日常的に介助が必要な医療的ケア児(医ケア児)の災害時の避難を巡り、茨城県つくばみらい市で、支援が必要な家族とボランティアとをマッチングする取り組みが始まった。保護者たちが地域で説明会を開催して理解を求め、住民らがボランティア登録。医療機関などの協力で避難訓練も実施しており、地域ぐるみで医療的ケア児を支える体制構築を目指している。

■自分ごとに

医ケア児は新生児集中治療室(NICU)に入院後、人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たん吸引といったケアが日常的に必要な子どもたち。避難が必要な災害発生時は、医療機器をはじめ、備品や栄養剤、注入器などの荷物が多い。移動には電源も欠かせない。

マッチング企画の中心を担うのは、つくばみらい市の相田香緒里さん(39)。長女の紗希さん(8)は生まれつき身体に障害があり、呼吸器も必要で、身体の全介助が必要。医ケア児の保護者たちはこれまで「避難したくても自宅で過ごすことを選ぶ家族が多い」と話した。

企画を思い立ったきっかけは、昨年6月に同市や同県取手市などを襲った大雨。「自分ごととして考えなければ」と思い立ち、具体的な避難方法などを考え始めた。「医ケア児だけでなく、取り組みが他の障害者や要支援者などへ広がれば」と期待を寄せる。

■現状知って

相田さんは、企画運営の協力を買って出た労働者協同組合「ワーカーズコープ・センター事業団」と避難支援ボランティアの募集に乗り出す。

今年2〜4月には、医ケア児の日常や避難する際の苦労を知ってもらおうと、市民対象の説明会も開催。「地域で『医ケア児を見たことがない』という人も多く、まずは現状を知ってもらうところから始めた」と話す。

住民に協力を求めたのは、荷物を運ぶ手伝いや避難所までの案内、電源供給などの支援。

説明会を経て登録した市民ボランティアは現在12人。このうち2家族とのマッチングが成立したという。相田さんは今後についても「医ケア児の全員に手助けがあれば、この上ない喜び」と語った。

■誰もが笑顔に

市民ボランティアや関係機関との連携確認のため、5月下旬には相田さんら医ケア児の3家族が参加して避難訓練も実施した。

医療関係者や市福祉課などから計約50人も参加し、市高齢者センター(同市小絹)から約1.5キロ離れた小絹児童館(同市絹の台)まで移動。相田さんが関係機関に安否を連絡し、連絡を受けた市民ボランティアが介助に必要な器具類や備品を車に積み込んで出発。終了後には参加者同士が改善点を話し合った。

避難訓練は今後も年1回のペースで開催予定。これまでの取り組みをまとめた報告会も開く。

相田さんは「障害の有無にかかわらず、誰もが笑顔になれる地域づくりに貢献したい」と話した。