ソフトバンクはLeicaブランドのAndroidスマートフォン「Leitz Phone 3」を発売した。レザー調に刷新し、レンズ描写を再現する「Leitz Looks」がバリエーション豊かになった新機種をレビューする。

 販売は日本国内限定で、ソフトバンクが独占販売する。直営店とオンラインショップでの直販価格は、19万5696円(税込み)だ。メーカーはシャープで、ライカカメラ(Leica)はデザインやカメラの描写を監修している。

 端的にいうと、Leitz Phone 3は「AQUOS R8 pro」のLeica版だ。ハードウェアは共通で、外観のデザインや撮影アプリなどに、Leicaオリジナルの機能を取り入れている。

●レザー調&ローレット加工でLeica Q3風のデザインに

 背面は、レザー調のデザインになった。ポリウレタン樹脂にダイヤモンドパターン施しており、「Leica Q3」に近いデザインテイストになった。べたつかない柔らかい手触りでありつつ、指へのフィット感も増している。

 レンズ周辺はガラス素材で、自然にレンズが視線を引きつけるデザインに合っている。これはAQUOS R8 proとの外観上の違いの1つだ。側面のローレット加工、つまり、アルミフレームに均等な間隔で凹凸を付けた加工が施されている。工業製品的な美しさがあるだけでなく、横向きで構えたときのグリップ感の向上にも一役買っている。

 前作同様にレンズキャップとシリコンケースが付属する。キャップはマグネットが仕込まれており、レンズに近づけるだけで、吸い付くように装着できる。

 実際に使ってみたところ、片手持ちは難しいと感じた。本体の重さは約209gだが、レンズキャップは実測で約18gあり、それを装着すると重心が上部に偏りがちになる印象だ。

 Leitz Phone 1と2で特徴的だったフレーム形状は、Leitz Phone 3では採用していない。Leitz Phone 1と2は角張ったフレームを採用しており、端末を天面から見ると、線対称にアーチが描かれて、均等な美しさがあった。今作ではそのフレーム形状の工夫がなく、ベースモデルのAQUOS R8 proに近い雰囲気になっている。

●AQUOS R8 proと同等の1型センサーカメラを搭載 新機能「14chスペクトルセンサー」も

 カメラのハードウェアは、AQUOS R8 proと共通だ。メインカメラはおなじみの1型イメージセンサーを搭載し、レンズは「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」という名前が付けられている。LeicaMレンズに由来するネーミングだ。暗いシーンでも非常に明るく撮影でき、光学的な柔らかなボケ感も特徴となっている。

 AQUOS R8 proと同様に新たに搭載するのが、14chスペクトルセンサーだ。これは光源の波長を分析して、色味を調整するためのもの。屋内空間で光源の色味にばらつきがある場合でも、このセンサーがより色を正しく検知して、カメラの写りをより見た目に近い色へ調整するという。

 なお、光学式の絞り機能は搭載しておらず、シャッターボタンも備えていない。ハードウェアとしてはあくまでAQUOS R8 proに準じている。

●Leitz Looksは表現の幅が広がる 絞り値の設定も可能に

 カメラアプリはAQUOSのものをベースにしつつ、Leica独自のカスタマイズが施されている。この端末には「Leitz Looks」という特別な撮影モードが搭載されており、Leicaのレンズ特有の描写をソフトウェアで再現する。

 Leitz LooksはLeicaレンズの持つ独特な表現力を、スマートフォンで再現する撮影モードだ。28mm、35mm、50mmの各焦点距離を持つバーチャルレンズを選択できる。これらはLeicaのMシリーズレンズにちなんだ名前があり、レンズの味わいをコンピュテーショナルフォトグラフィー技術で再現する。より具体的な説明をすると、画像処理を用いて色味を調整したり、被写体検出してぼかしを加えたりして、写真に独特の質感を加えるモードとなっている。

 さらに「Leitz Tones」というLeicaカメラ風のフィルターを使用し、アレンジも追加できる。ブラックや映画風などLeitz Phone 2からの3種類にフィルターがあり、3では「Enhanced」と「Vivid」という2種類が加わった。これにより、レンズとフィルターの組み合わせで合計18パターンが選択できるようになっている。

 さらに、バーチャルレンズでは絞り値を設定できるようになり、28mmと35mmでは5段階、50mmでは6段階の調整が可能で、ボケ感を浅くすることができるようになった。

 Leitz Looksは、AIによる被写体認識技術を活用して、Leicaレンズ特有のボケ味や色調を再現する機能だが、独特の癖があるのも事実だ。AIの被写体認識が正確でない場合、ボケ味が不自然になってしまうことがある。つまり、この機能は被写体認識の精度に大きく依存しているのだ。

 現状では、被写体と背景の分離精度にばらつきがあるため、期待通りの結果が得られないこともある。しかし、ポートレートのような典型的な被写体を撮影する場合は、記憶に残るようなアーティスティックな写真が得られやすい。また、光や影の描写も他にはない独特の味わいがある。特性を踏まえた上で、使いこなしてみたくなる印象的な機能だ。

●構図を見いだすブライトフレームが興味深い 建築物を真っすぐに撮る新機能も

 「ブライトフレーム」は、Leitz Looksと並んで、Leitz Phoneの代表的な機能だ。実際に写真として収める画角よりも広い範囲をプレビュー表示する。これは、オートモードで利用できる。

 ブライトフレームをオンにしてスナップ撮影すると、被写体と背景の関係性や、画面内の余白の使い方などを意識しながら撮影できる。構図を意識的に考える習慣をつけられるだろう。

 マニュアル撮影モードには、「ライカ・パースペクティブ・コントロール」という新機能が追加された。

 これは、建築写真のパースゆがみを補正する機能だ。建物の形状を認識してプレビュー画面に白枠を表示し、撮影後のJPEG画像ではその部分のみを表示するようになっている。ただし、発売前の試作機を実際に使ってみた印象として、建物を形状を正しく認識するのが難しく、調整の余地があるように感じた。今後の改善に期待したい。

●ウオーターマークでレンズ名が入るように

 ウオーターマーク機能が強化され、Leitz Phone 3の写真にはレンズ名、F値、シャッタースピードの情報が記載されるようになった。ここ記載されるレンズ名は、ハードウェアとしてのレンズ名、つまり「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」が記述される。当然F値も固定でF1.9となる。

 ちなみに、Leitz Looksでバーチャルレンズを使って撮影したときのレンズ名や、フィルター、仮想F値はこのウオーターマークには反映されない。現状でLeitz Lookで撮影した後に、どのようなレンズ設定を使用したかは実際の写りから推測するしかない。ウオーターマークでもメタデータでもいいが、確認する手段が欲しいところだ。

●ウィジェットが形作るLeicaの世界観

 前作から引き続き、独自のウィジェットを2つ搭載している。

 1つは、「LFI Widget」だ。これはLeicaの写真投稿サイトに掲載された作品を配信するウィジェットだ。これはLeitz Phoneならではの雰囲気を引き立たせる上で重要な役割を果たしている。

 2つ目は、「Golden Hour Widget」だ。これは朝焼け・夕焼けの時間をグラフィカルに表示するウィジェットだ。写真撮影に最適な時刻を知らせるだけでなく、その時間に空を眺めてみようという気分にさせる

 これら2つのウィジェットは機能的には豪華なものではないが、写真撮影の体験を重視するLeicaの世界観をよく反映したものになっている。

 UI(ユーザーインタフェース)上の工夫としては、カメラアプリを中心に、細かな点でカスタマイズが加えられている。ロック画面では、右下に鎮座するカメラアプリの赤いアイコンが目を引く。シャッター音は「チキッ」というおとなしい音になっている。

●スマホとしては最上級のスペック

 AQUOS R8 proと同様に、カメラ以外のパフォーマンスも高く、最上位のフラグシップといえる。

 ディスプレイは約6.6型でPro IGZO OLEDを搭載。ピーク輝度は2000ニトと非常に高く、屋内照明の環境にあわせて画面の色合いを最適化する機能を備えている。

 プロセッサは2022年発表のハイエンド製品「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載する。メインメモリは12GB、ストレージは512GBとなっている。5Gはミリ波をサポートしており、ソフトバンク以外の国内キャリアの主要周波数帯もサポートしている。

 特徴的な機能としては、3D超音波に対応した指紋認証センサーがある。Qualcommの技術を採用しており、認識範囲が広く、認証速度もトップクラスといえるほど高速だ。

 総合的にみて日常的な使い勝手については申し分ないレベルだ。なお、OSバージョンアップの提供期間は発売から4年間をうたっている。

●まとめ:写真撮影へと駆り立ててくれるスマホ

 1型センサー採用のスマホとして3世代目を迎えたAQUOS R8 proに、Leicaの感性を取り入れた「Leitz Phone 3」。Leica Q3をほうふつとさせる品のあるレザー調の質感になり、Leitz Looksは写真撮影をより楽しく、よりクリエイティブなものにしてくれる。単に美しい写真を撮影できるスマートフォンというだけでなく、ユーザーを写真撮影へと駆り立てる魅力を持っている。