私は、このTED Talksに登場するリーダーを「サービスを提供する事業者」と捉えたときに、その一番近くにいる「ファーストフォロワー」、つまりは製品・サービスを強く支持している熱狂的なファンの存在に着目しました。本書では、事業やサービスのマーケティング活動の初期段階において、このファーストフォロワーの存在にどのような価値を見出し、その後、ファンと共に顧客全体の体験をどのようにデザインできるのかを、実際にサービスを手がける企業の取材をもとに解説しています。

 冒頭の「How to start a movement」の動画さながら、初期段階でその製品やサービスの魅力に気づき、熱狂的なファンとして振る舞った一番はじめのフォロワーは、時に信じられないほど多くの顧客を連れてきます。これらのファーストフォロワーはどのように行動し、どのようなプロセスを経てさらなる顧客を生み出すに至ったのでしょうか。多くのファンを生み出す第一歩をどのように踏み出すべきなのか、熱狂的にサービスやプロダクトを愛した最初のフォロワーの行動に着目し、取材を通して明らかにしていきます。

■ファーストフォロワーとは

 まず、この「ファーストフォロワー」という存在の解像度を高めるために、本書において前提となる用語の定義をしておきます。そのヒントを得るために、冒頭のTEDの動画で1人目のフォロワーが示した行動に潜んでいる、示唆深い特徴を見てみたいと思います。

 TEDのプレゼンテーションをしているSivers氏の解説をそのまま引用すると、次の通りです。

 最初にリーダーが勇気を持って立ち上がり、嘲笑される必要があります。でも彼の行動に続くのはすごく簡単です。ここで最初のフォロワーが重要な役割を担っています。みんなにどう従えばいいのかを示すのです。リーダーが彼を対等に扱うのを見てください。

 今やリーダーは1人ではありません。複数になったのです。友達に声をかけていますね。最初のフォロワーというのは過小評価されていますが、実はリーダーシップの一形態なのです。こんな風に目立つだけでも勇気がいります。最初のフォロワーの存在が1人のバカをリーダーへと変えるのです。