来年度以降の予算編成について、財務省が「社会保障関係費で歳出の目安を継続すべき」との考えを打ち出したことに対し、日本医師会の松本吉郎会長は4月17日の定例会見で、「高齢化の範囲内に抑えるという対応はデフレ下の遺物。失われた30年の過ちを繰り返してはならない」と強く牽制した。

 財務省の考えは4月16日の財政制度等審議会財政制度分科会で示されたもの。分科会では夏の「骨太の方針」に向けて審議を開始しており、この日は「こども・高齢化」をテーマに議論した。財務省は提出した資料の中で、過去9年間、社会保障関係費の実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに抑えるという、いわゆる歳出の目安の下で措置してきたと指摘。今後の方向性として、「歳出の目安を継続しつつ、その下で、引き続きメリハリのある予算編成を実施していく必要がある」との考えを提示した。

 これに対し松本会長は、「歳出の目安を示すということは、人件費に上限を設けるようなものであり、政府が重要施策と位置づけている賃上げを阻むものと言っても過言ではない」と批判。財政審の同じ資料の中では、今年の春闘で賃上げ率が5%を超える高水準になったことを評価していることに触れ、「非常に矛盾した話だ。賃上げの流れを医療・介護従事者約900万人にも波及させていくべき」と強調した。