いよいよゴールデンウィークがスタート。今年は平日3日休めば最大10連休となるまさに大型連休。ゆっくりお休みがとれる人にも、連休中も変わらず仕事の人にも、ウォーカープラスからおすすめしたい漫画を紹介する。

商業誌に作品を掲載しながら、個人でも作品を発表している吉良いと( @kilightit )さんの代表作、幽霊が見える葬儀屋を中心に、さまざまな人間ドラマが描かれる大人気シリーズ「ようこそ亡霊葬儀屋さん」から、桜の木の下である人を待ち続ける男性の物語をお届けしよう。


――ここで人を待つと帰れなくなる

そんな言い伝えのある桜の木があった。霊が“視”える葬儀屋・烏丸枢(からすま・くるる)は、その桜に取り憑いている少女の霊にそっと話しかける。「もう諦めたらどうです?」少女の霊はそれでも、「ある人」を追い払うために、諦めさせるために必死に怨霊のフリをする。

やがて今年もその人はやってくる、少女の霊が取り憑く桜のもとへ。すっかり白髪の、初老の男性は葬儀屋に「40年です」と打ち明ける。かつて、周囲に認められず結婚できなかった女性と、駆け落ちをするため待ち合わせをしたこの桜の下で、現れない彼女をもう40年も待ち続けているというのだ。

ただもう、二度と彼女とは会えないことを男性は悟っている。彼女の身に何かが起こり、約束を守れなかったのだと。それでも「なんだか彼女がここにいる気がして」、男性は毎年懲りずに桜の季節になるとここを訪れていたのだ。

「もう来るな!」と強気な彼女に叱られそうだと、男性は優しく笑う。それでも彼女を1人、待ちぼうけにさせるわけにはいかないと、彼は待ち続けているのだ。男性には決して見えないが、その言葉に大粒の涙を流す少女の姿が葬儀屋烏丸には視える。「案外、嬉しくて泣いているかもしれませんよ」

作品について作者の吉良いとさんは、「想い人には自分のことなんて忘れて幸せになってほしい。でも本当は、自分以外の人と結ばれる姿は見たくない...。ずっとずっとそばにいてほしい。そんな複雑な乙女心と揺るぎない愛を今作では描きました。お読みいただけますとうれしいです!」と答えた。

X(旧Twitter)やpixivにアップされると、読者から「泣いた」「来世は幸せな家庭を築いてほしい…」「大好きです!!」など絶賛のコメントが寄せられた本作。作品の中では直接語られていないが、少女が当時、待ち合わせ場所に姿を現さなかった理由を考えると、とても切ない気持ちになる。






画像提供:吉良いと(@kilightit)