タレントでドラァグクイーンのサマンサ・アナンサが、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組で、“人生最大のカミングアウト”について語った。

 この日のトークテーマは、「スーパー4KマジックSHOW Mr.マリック超魔術団2024」の千秋楽での出来事。同公演は、Mr.マリックとヒップホップアーティストの娘・LUNA(ルナ)との初共演としても話題となった。

 サマンサは、LUNA(チョモランマLUNA子)と枝豆順子とともに活動しているアーティストグループ・D3として参加。よその親子のこととはいえ、「この父と娘がどんな化学反応を起こすのだろうか」と楽しみにしていた。

 Mr.マリックとLUNAの親子共演を楽しみにしていたサマンサだが、実は、自身の親も千秋楽の会場を訪れていたという。

 以前、番組内で「ドラァグクイーンとして活動していることは親には知られていないと思う」と話していたが、放送後にある出来事が起こった。なんと、数か月前にテレビのロケ番組に出演したところ、番組を見た母親が声で自分の息子であることに気づいたのだ。その後母親から電話があり、説明せざるを得ない状況に。この電話をきっかけに、すべてを話したという。

 サマンサの話を聞いたもののよくわかっていない様子の母親だったが、ショックを受けたかもしれないという思いから「ごめんね」と謝ったサマンサ。ところが、母親から返ってきたのは「ただびっくりしただけよ」「かわいらしいね」という意外な反応だった。さらには、番組が深夜ロケだったことから、「どうやって帰るの?」と息子を思う言葉もあったそうだ。

 カミングアウトした翌日、母親は、サマンサが唯一ドラァグクイーンであることを知らせていた、いとこと幼馴染のもとに「知ってた?」とリサーチに。このときにサマンサがラジオ番組のパーソナリティーを務めていることも知り、実際に番組を聴いた母親は涙ぐんでいたのだとか。

 実は、サマンサの家系は「声の仕事」との関わりが深かった。祖父は、戦時中に無線通信士や詩吟の先生をしており、今回話題の母親もマイクを使う仕事をしていた。そのため、母親のこぼした「やっぱり私の子どもやわ」という言葉には、サマンサも納得したという。

 サマンサが母親にカミングアウトしたことを聞いたLUNAは、「スーパー4KマジックSHOW Mr.マリック超魔術団2024」は“親子共演”もテーマであることを明かした。同じく話を聞いていたD3のメンバー・枝豆順子も、過去に母親がイベントを訪れたことがあるそうで、「意外と打ち解けた」と話したという。

 サマンサの話を受け、2人は「この流れはどう考えても、お母さんをお招きするタイミング」と提案した。

 メンバー2人だけでなく、ほかの共演者からも「よくわからない説明よりも、実際のステージを見てもらうことでより深く理解してもらえる。母親と同世代のMr.マリックがいることでも安心してもらえる」と説得されるとともに、「何かあっても私たちがいるから大丈夫」と力強く後押しされたという。

 そんな仲間たちに支えられる形で、母親を大阪会場での公演に招待することに。そして当日、ステージに立つサマンサの後ろのスクリーンには、満面の笑みの母親が映し出されていた。

 今回の公演において、Mr.マリックは「親子の絆」もテーマにしていたのかもしれない。Mr.マリックと娘のLUNA、方向性は違うが同じエンターテインメントでつながっている。

 親子関係を構築していくなか、遠回りをしてきたMr.マリックとLUNA。そんな2人が同じステージに立つことができたきっかけは、「マジックのステージに楽しい雰囲気を作り出してくれたD3だった」と、Mr.マリックは明かした。

 さらに、Mr.マリックは千秋楽のトークでもD3の活動に言及したそうで、会場を訪れた母親とサマンサの幼馴染は「それ(D3について触れたの)は、サマンサと母親に向けた優しさだったのでは」と感じたという。

 今回のような機会を設けてくれたMr.マリックをはじめ、共演者、マネージャー、スタッフに感謝しつつ、サマンサはこのように胸の内を明かした。

「親子というのは、遠回りすることがある。1番近い存在は親だが、事情があって遠回りする家庭もある。そして、この遠回りは無駄にならないこともある」(サマンサ)

 同公演では、サマンサの心を掴んだもう一つのエピソードがある。それは、観客と一緒にスプーン曲げを体験するコーナーで、車いすの夫婦からかけられた言葉だという。

 なかなかスプーンを曲げられずにいた奥さんに、サマンサは「残念ですね」と声をかけた。すると、夫婦は口をそろえて「今日、来られてよかった。そして会えてよかった」とひと言。サマンサは、「ホロッときたのと同時に、来場者の笑顔が見られたことが原動力になった瞬間だった」と思い返した。

 この日のメールテーマは、「死ぬまでに一度はしたいこと」。サマンサは、「それぞれのタイミングでいいと思いますが、絶対に死ぬまでに親孝行はしてください」とリスナーに投げかけた。

 ともにパーソナリティーを務めるウラリエは、終始涙をこらえながらトークに聴き入っていた様子。前回の放送では自身が噛みまくっていたことから“噛み回”と称していたが、「今回は“神回”!」と絶賛した。

 実は今回、番組冒頭でスプーン曲げに挑戦していたサマンサとウラリエ。残念ながらサマンサは曲げることができなかったが、ウラリエは成功。本当に“ハンドパワー”だったかどうかは定かではないが、見事にスプーンを曲げてみせた。

※ラジオ関西『Clip金曜日』内「サマンサのド・ラ・チ・ラ」2024年4月26日放送回より