シンガポール政府は15日、大阪・関西万博で出展するパビリオンのデザインを発表した。参加国が自前でパビリオンを建設する「タイプA」に属し、このタイプでは最も早い、今年(2024年)1月10日に着工した。同年10月ごろの完成を目指し、内装作業を終えるのは、開幕1か月前の来年(2025年)3月の見通し。

 シンガポールパビリオンの敷地は約900平方メートル。会場中心部のシンボルとなる木造建造物「大屋根リング」のすぐ内側にある。シンガポールの最新のアートや文化、食などの魅力もアピールする。

 パビリオンのテーマは「ゆめ・つなぐ・みらい」。

 建物は「ドリーム・スフィア(夢の球体)」と命名され、リサイクルされたアルミニウムの素材を2万枚以上使用する。直径18.6メートル、高さ17メートルの赤い巨大な球体が特徴。外観は「青海波(せいがいは)」と呼ばれる同心円の一部が扇状に重なり合う、うろこのような模様を描いている。

 球体は、シンガポールが世界地図で「熱帯にある、小さな赤いドット(点・シンガポールでの表記は”小紅点”)」で表現されることにインスピレーションを得た。そして、”小さくても、夢が大きく力強いシンガポール”を象徴する意味合いを持たせた。

 設計を担当したシア・チー・ホアン氏(DPアーキテクツ社CEO)はラジオ関西の取材に対して、「デザインと建設について、一見、難易度が高く見えるが、そこは素晴らしいチームの技術力を結集している。環境にも優しい構造だ。フォルムの作製は別の場所で、組み立ては会場の夢洲でそれぞれ行う」と話し、短期間での完成を強調した。

 ドバイ万博では、グリーンをベースに造園をパビリオンのデザインに取り入れたシンガポール。大阪・関西万博では「世界であまり知られていない“赤い点”」を選んだ。政府関係者によると、イマジネーションを前面に押し出したデザインで、関西文化のユニークさや面白さを鑑みたという。赤い球体は、日本の「梅の実」の形を想起させ、これまでとは違うシンガポールのイメージを持たせた。

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 シンガポールは1965年にマレーシアから独立し、その5年後の1970年、大阪万博に出展している。トロピカルな庭園都市をイメージし、熱帯植物や動物、鳥類を配したエキゾチックな空間が人気だった。大阪・関西万博が開かれる来年(2025年)は、独立と日本との国交樹立60年の節目に当たる。

 大阪市内で会見したオン・エンチュアン駐日大使は「シンガポールはアジア最大の対日投資国。万博を機にさらなる関係強化を図りたい」と抱負を語った。
 万博を運営する日本国際博覧会協会によると、シンガポール政府観光局によるプロジェクトチームは全員が女性。意思決定も早く、海外パビリオン着工”一番乗り”の原動力となったという。

 博覧会協会は、万博開催によってSDGs(持続可能な社会の実現)を目指すため、脱炭素・資源循環に関する方向性を示す「EXPO 2025 グリーンビジョン」を打ち出している。
 シンガポールも2030年までに国を挙げて取り組む環境行動計画「グリーンプラン」を公表しており、大阪・関西万博ではこれらの具体化を進める。