◆『羽川英樹の出発進行!』

 今年の3月23日、北大阪急行の『千里中央』〜『箕面萱野』間2.5kmが延伸されました。1970年の大阪万博にあわせて『江坂』(吹田市)〜『千里中央』(豊中市)の5.9kmで開通した北大阪急行。今回の延伸部分にある2駅はいずれも箕面市内になります。

 箕面といえば紅葉が美しい大滝と西川きよしさんの豪邸で有名ですが、シニアやファミリーにやさしいまちとしても評判を呼び、北摂屈指の人気住宅地として発展しています。

 そんな箕面市ですが、これまでは市の西部に阪急箕面線が通るだけで、鉄路には恵まれているとは言えませんでした。

 市の中央部に大阪メトロ御堂筋線と直通する鉄道を走らせるのは、市民にとっての長年の夢だったんです。

 延伸開通から1か月あまり。新しくできた2駅には何があるのか、周辺で何が楽しめるのか、どんなまちなのかを取材してきました。

 まずは、これまでの北大阪急行最北のターミナルだった『千里中央』の現状から見ていきましょう。

 駅から広がる千里ニュータウンは、1962年に日本初の大規模ニュータウンとして街びらきが行われ、多くの人々が各地から移住してきました。そして8年後の1970年、あの大阪万博のときに『千里中央』駅は誕生しました。

 万博開催中は『千里中央』〜『万国博中央口』間が臨時延伸され、来場者の3分の2を運びました。現在、駅の周辺は核店舗となる「せんちゅうパル」や、開業時は斬新な外観だった百貨店「千里阪急」、新参の「SENRITOよみうり」などが元気に営業しています。

 しかし、あの一世を風靡した千里セルシーや、多くのスターを生み出したセルシー広場は2019年に完全閉鎖。オイルショックの時にはトイレットペーパー騒ぎで有名になった大丸ピーコックも姿を消し、2025年度中には千里阪急ホテルも閉館することが決まっています。

 一時は高齢化した街も、大阪モノレールと接続して利便性が増し、大阪国際空港(伊丹空港)や新大阪にも近いことから若いファミリー層が住み始めて、いま、再び活気を取り戻しつつあります。

 ここからは新駅とその周辺を見ていきましょう。

『箕面船場阪大前』は新御堂筋の下に設けられた駅です。ちなみに「阪大」=大阪大学は北摂エリア各地にキャンパスがあり、大阪モノレールの柴原阪大前と阪大病院前、阪急の石橋阪大前に次いで、4つ目の「阪大」が付く駅名の誕生となります。

 改札口には近未来的な円形照明があり、通路壁面にはレンガタイルが施され、地下3階の改札部分からは長い直行エスカレーターで一気に地上2階まで上がります。

 駅に隣接して建つのが、箕面市立文化芸能劇場。最新設備を備えた大ホールは1400人が収容できます。

 劇場からのプロムナードの向こうには、2021年に移転してきた阪大・外国語学部のキャンパス(大阪大学箕面キャンパス)があり、その向かいには箕面市立船場図書館が。ここは大学と市民が共同利用でき、71万冊が収蔵されています。新駅の誕生もあり、現在タワーマンションが3棟建設されています。

 この地は、1960年代に大阪・船場(大阪市中央区)が荷下ろしのトラックで大渋滞を起こしていた影響などもあって、繊維問屋がこぞって移転してきて、「箕面船場」を形成した場所。路線の延長はこの頃からの地元の半世紀にわたる夢だったんです。

『箕面船場阪大前』を出発するとすぐに地上に飛び出し、車窓右側には繊維問屋街、左側には住宅地と箕面山系が広がる穏やかな風景を見ることができます。

 そして、北大阪急行の新たな北端・終点となるのが『箕面萱野』です。ここは島式1面2線のホームで、木が随所にうまく使われています。ホーム先端は狭いスペースですが、“鉄ちゃん”には最高の撮影スポットになっています。駅前にはバスターミナルも設けられ、これまで千里中央発着だったバスもだいぶこちらに移ってきました。

 同駅に隣接するショッピングモール「みのおキューズモール」は、まちの自然とうまく調和した商業施設でもあります。これまでの6棟・約110店舗に加えて、新駅開業日の3月23日には、駅ホーム横と高架下に「STATION棟」が完成。ホーム横の「STATION-1」にはスーパーマーケットチェーン「ライフ」を運営するライフコーポレーションのプライベートブランドで自然派スーパーの「ビオラル」や、各種コロッケが抜群にうまい地元の人気店「クロケッタ」などが出店し、ホーム下の「STATION-2」にも新たな飲食店舗が並びます。モールに隣接する広々とした全面人工芝生の広場「箕面市立かやの広場」も家族連れには大人気です。

 みのおキューズモールの一角にあるスーパーマーケット「イオンスタイル箕面」は、もともと、2003年にフランス発のスーパー・カルフールでした。当時はローラースケートを履いた店員や、今も残る斜行エスカレーターが斬新でした。(※当時、カルフールを含めた複合施設としてできた「箕面マーケットパーク ヴィソラ」が、2013年10月、「みのおキューズモール」に名称を変更)。

 延伸した北大阪急行の話題に戻りましょう。運賃は『千里中央』から1駅先の『桃山台』までは依然100円なのに対し、同じ一駅先でも『箕面船場阪大前』までは延伸加算が入り160円、『箕面萱野』までは190円となっています。

 この延伸により『箕面萱野』と大阪メトロ御堂筋線の『梅田』が25分で結ばれることになり、大阪市内の「キタ」エリアはもちろん、「ミナミ」エリアの心斎橋・なんば、そして天王寺へも直結するという、箕面市民の半世紀に渡る夢が実現したのです。

 1970年の大阪万博のときに『千里中央』までが完成し、2025年の大阪・関西万博を前に延伸された北大阪急行の路線。箕面の新しい顔を見に、ぜひ一度ご乗車ください。(羽川英樹)