F1マイアミGPを圧倒的なレースペースで制したレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンだが、その週末に先駆けて、彼はF1マシンとは別の”ビースト”に乗っていた。

 彼がドライブしたのは、ホンダとその北米レース活動を統括するホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)が開発した『CR-Vハイブリッドレーサー』。インディカードライバーのジェームス・ヒンチクリフ立ち会いのもと、マイアミ・スピードウェイを周回した。

 CR-Vは都市型のSUVじゃないか……と思うかもしれないが、このCR-Vは一味も二味も違う仕様となっている。

 まず搭載されているパワートレインは、インディカー用の2.2リッターV6ツインターボエンジンで、シェル製100%再生可能レース燃料用にチューニングが施されている。

 また、インディカーが将来的な導入を目指しているハイブリッドシステムを”走る実験室”としてこのCR-Vハイブリッドレーサーで先行搭載。バッテリーにもスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)を使用し、短期的なブーストで全体のパワーを向上させている。

 HPDのデビッド・ソルターズ代表は以前、内燃機関と電動システムの具体的な内容については詳しく明かさなかったものの、最高出力が800馬力であることを認めていた。

 ボディも下半分はカーボンファイバー製。カスタムチューブシャシーをベースに、マシン上半分は第6世代CR-Vのスチールボディを流用し、連結式のクラムシェル型となっている。フロントサスペンション&フロントブレーキは『NSX GT3』から、リヤサスペンション&リヤブレーキはダラーラ製インディカーマシン『IR-18』から流用……それをCR-Vに落とし込むというキメラっぷりだ。

 HPDはこのCR-Vハイブリッドレーサーに”ビースト”というふたつ名を付け、これまではインディカーの会場でファンにお披露目が行なわれてきた。

 このビーストを初めて目にしたフェルスタッペンは「こんなの見たことがないね」と一言。走行後には「気に入ったよ! 実際かなりのグリップ感があった」と感想を語っていた。

 なお、ホンダはスタディモデルとしての実験的な位置づけにCR-Vハイブリッドレーサーを置いている。そのため、レース活動への応用はあれど、市販車への転用という点では「ノーコメント」という回答がホンダ側から得られている。