2022年限りでF1を引退した4度のチャンピオン経験者であるセバスチャン・ベッテルが、ポルシェのLMDhマシン”963”を、モーターランド・アラゴンでドライブ。合計4スティントを走り、118周(581km)を走破した。

 ベッテルはポルシェ963での初の本格的走行を終え、大いに楽しんだようだ。

「もちろん、僕は他のモータースポーツのカテゴリーにも注目している。WECやル・マンで活躍しているドライバーもたくさん知っている」

 そうベッテルは語った。

「ある時点で僕の好奇心が非常に高まり、乗ってみることを思いついたんだ」

「ポルシェは、963という現行のハイパーカーをテストするチャンスを僕に与えてくれた。シートの調整、シミュレータセッション、そしてヴァイザッハでのロールアウトの全てで、いい感触を得ていた」

「アラゴンのサーキットで、ポルシェ963をドライブするのは、間違いなく楽しかった。まずは全ての慣れて、自分のリズムを掴む必要があった。頭の上に屋根があるから、全く異なる体験だった。車両も重いし、タイヤに対処することも同じように必要だった」

「ポルシェのワークスドライバーはみんなとても親切で、何が特別なのか、何に慣れる必要があるのかを説明してくれた。そのおかげで、僕はとっても楽をすることができたんだ」

 スポーツカーレースは、F1の現役を退いたベッテルにとって、興味をそそられる選択肢ではあるようだ。しかし現時点では「これ以上の計画はない」とベッテルは強調した。

 ポルシェは今年、20回目の総合優勝を目指し、ル・マン24時間レースに挑む。そのためにも、今回のテストは非常に貴重だったが、そこにベッテルがいるというのは特別だったと、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージングディレクターを務めるジョナサン・ディウギッドは語る。

「アラゴンは、ヨーロッパ内で24時間走ることができる、数少ないサーキットのひとつだ。ル・マンに向け、36時間連続で走る機会を与えてくれる」

 ディウギッドはそう語る。

「そしてル・マンで見られるような、最高速度300km/hを超える、かなり長いバックストレートもある」

「そしてセバスチャン・ベッテルがここにいるというのは、チームにとってまたとないチャンスだ。彼は、4回もF1のチャンピオンになった男だ。彼はハイブリッドシステムと、高性能なレーシングカーに関して、豊富な経験を持っている」

「クルマがどんな状況にあるのかということについて、彼の新鮮かつユニークな視点に基づき、我々のシステムやパフォーマンスに対してフィードバックをもたらしてくれる、またとない機会なんだ。彼を迎えることができて、とても喜んでいる」

「そして彼が笑顔でマシンから降りてきたのも、それはそれで良かった」

 なおこのテストには、ベッテルの他にWECに参戦するポルシェのレギュラードライバーであるマット・キャンベル、ミハエル・クリステンセン、フレデリック・マコヴィッキ、ケビン・エストレ、アンドレ・ロッテラー、ローレンス・バンスール、そしてDTMチャンピオンのトーマス・プレイニングらも参加した。