3月30日、日本で初のフォーミュラEのレース”東京ePrix”が、東京・お台場の東京ビッグサイト周辺の、公道区間を含んだ特設コースを舞台に開催される。

 この東京ePrixは、観戦チケットこそ早々に売り切れてしまったが、表彰式を見ることができるファンビレッジが無料で解放されたり、複数箇所でパブリックビューイングの開催が予定されていたり、地上波やJSportsで生中継されたりする予定。初めてフォーミュラEのレースを観るという方も多いだろう。

 このフォーミュラEは、F1やスーパーフォーミュラといった他のレースとは趣が異なる。ただ速く走ればいいというだけでないのだ。

 そのフォーミュラEの面白さについて、日産フォーミュラEチームのチーフ・パワートレイン・エンジニアの西川直志は、「エコランと速さの両立」だと語った。

「ただ速く走ればいいというモノじゃないことを、理解していただきたいと思います」

 そう西川エンジニアは語る。

「フォーミュラEはエコランと速さの両立、これがテーマなんですよね。いかに決められたエネルギーの中で速く走るか、そういうレースです」

「ただ速く走るとなると、やっぱりF1と一緒になってしまうと思います。実際にF1の方が圧倒的に速いので、そこだけだと見どころじゃないと思っています」

 テレビの中継では、時折各車のエネルギー残量が表示される。これを見て、今後の展開を推測していくと、フォーミュラEを楽しめるはずだと西川エンジニアは言う。

「レースの途中でちょっとしか情報の出ないバッテリー残量とかも、皆さんなりに咀嚼して見ることができるといいなと思います。あ、このチームはライバルよりも何%バッテリーが多く残ってるから、オーバーテイクを仕掛けられてるんだな…… 余裕があるから今ここでエネルギー使ってるんだなとか、想像できると思います」

「逆にトップを走っていてもエネルギー残量が少なければ、このドライバーはどこかでセーブしないとチェッカーまで行けないとか、そのあたりを予想していただくと、見どころがわかりやすいと思います」

 東京ePrixの前哨戦となったサンパウロePrixは、まさにその西川エンジニアの言葉通りのレースとなった。最終ラップで前を行くドライバーを交わしたマクラーレンのサム・バードが優勝。これもエネルギー残量が大いに関係していた。また3位に入った日産のオリバー・ローランドも、最終ラップの最終コーナーで2台をまとめて交わして、表彰台の一角を掴み取った。これぞギリギリまでエネルギーを使い切ることが求められる、フォーミュラEの醍醐味と言えよう。

 日本初開催となる東京ePrix。もちろん日本の公道を走行するマシンの迫力を楽しむのも良いが、少し頭を使いながら見ると、他のレースとはまた違った楽しみ方がある。