世界ラリー選手権(WRC)のプロモーターは、イベント中のストーリーを視聴者に伝える能力を向上させようとしており、F1のようなチームラジオ(無線)を導入しようとしているようだ。

 いくつかのモータースポーツカテゴリーでは、生放送に無線を放送にのせており、F1はおそらくその先頭を走っている。

 WRCは現在、すべてのステージがRally.TVを通じて生中継されているが、視聴者がクルーから話を聞けるのはステージ終了時だけ。ステージ中にアクションやインシデントが発生した場合、視聴者は何が起こったのか分からないという状態になることもある。

 そのためWRCは、ラリー・ポルトガルからチームラジオのコンセプトに取り組む特別コンサルタントを任命。ドライバーたちの声を視聴者に届けようと考えている。

 WRCのイベント・ディレクターであるサイモン・ラーキンは、motorsport.comなどのメディアに対し、「我々からすると、ストーリーを伝えるという点においてもう少し直接的な役割を担う必要があると思うし、我々自身をもう少しうまく統合する必要がある」と語った。

「ステージを終えて20秒後にドライバーのところに行くのではなく、ドライバーのキャラクターを引き出す様々な機会を見つける必要があると思う」

「我々は来年に向けて、チームやメーカーと協力して、クルマからより多くのデータを引き出したり、クルーとチームとの間でより多くのライブインタラクションを行なったりするための新しいコンセプトを持っている」

「現時点で、ラリーカーは非常に高価だが、私のレンタカーの方がそうしたラリーカーよりも優れたコネクティビティを持っている」

「そうしたマシンとその中身について、より優れた技術的なストーリーがあるはずなんだ」

「WRCにおけるチームワークとはドライバーとコ・ドライバーの間の仕事だと長年考えてきた。しかしそれは、ドライバーとコ・ドライバーにパフォーマンスを発揮できるマシンを提供する責任を負う、70〜80人の人間がここにいるという現実から少し切り離されていると思う」

「我々はより多くのキャラクターを引き出すことができる。ドライバーとエンジニアの関係は、他のスポーツが得意としていて、我々に欠けているものなのかもしれない」

 クルーとのコミュニケーションを生中継する際に障害となるのは、チームが隠したい情報がライバルにも広く知れ渡ってしまうことだ。

 こうした取り組みはまだ始まったばかりだが、WRCプロモーターは、放送では見ることのできないマシンからのライブデータへのアクセスをチームに提供することで、将来的にチームラジオのライブ放送を許可する合意をチームと取りつけることを期待している。

「我々がチームに提供できる見返りは、油圧、水圧、タイヤ空気圧モニタリングシステムなど、より多くのライブデータを提供することだと考えている」

 そうラーキンは付け加えた。

「何か上手くいかないことがあったとしても、もしステージ中やロード・セクション中などに様々なアクションを取ることができれば、走行断念を避けられるかもしれない」

「それにもし我々がより深く関わることができれば、ステージ終了時にもっと興味深い質問ができるはずだ」

「データをチームに提供したからといって、我々がテレビでそのデータを利用するわけではない。これは見返りというものだ」

 WRCプロモーターのスポーツ・シニア・ディレクターであるピーター・トゥールは、次のように付け加えた。

「チームはこれに関してかなりオープンだ。レッドラインが設定されるかもしれないが、我々はそれを目指さなければならない。すべてを手に入れることはできないかもしれないが、少なくとも今よりは多くのものを手に入れることができる」