6時間レースとして開催されながらも、実際には赤旗中断分の時間が巻き戻され、スタートから8時間弱でフィニッシュを迎えたWEC(世界耐久選手権)第3戦スパ・フランコルシャン。当初のレース終了時刻を超える形となったことに、優勝を逃したフェラーリは抗議を行なったが、この抗議は却下されることになった。

 フェラーリ勢はこのスパ6時間のレース後半、50号車と51号車によるワンツー体制を構築していた。そんな中、アール・バンバーが駆る2号車キャデラックがLMGT3車両とケメル・ストレートで絡んで大クラッシュを喫すると、レースは赤旗中断となった。

 事故が発生したのは、レース開始から4時間13分後の現地時間17時13分。19時のフィニッシュまで残り2時間を切っていた。しかしながら、バリアの修復が19時までに間に合わないため、スチュワードはセッションを19時10分に再開し、そこから1時間44分のレースを行なうことを決定した。なお、中断を除いたレース時間は合計5時間57分となっているが、これは赤旗が掲示されてから各車両がパルクフェルメに整列するまでに要した3分を差し引いたためだ。

 この決定により、赤旗中断の直前にピットインしていたポルシェ勢(JOTAの12号車とファクトリーチームの6号車)が大きく得をする形となり、再開後のレースでは12号車、6号車がワンツーフィニッシュ。フェラーリ勢は3位、4位となった。

 これを受けてフェラーリは、スチュワードの裁定と暫定結果に対する抗議を提出したのだが、FIAの国際競技規約では「審査委員による裁定を抗議の対象とすることはできない」としており、抗議は棄却される形になった。

 フェラーリのスポーツカーレース部門の責任者であるアントネッロ・コレッタはレース後、motorsport.comに対して次のように語っていた。

「今回起きたことは理解ができない」

「時計は動いていたのに、6時間を過ぎてからレースが再開されるという決定がなされたのは、私としても予想外だった」

「率直に言って、我々はレースに勝てる状況にいたので納得できない」

「私の予想では、レースをフィニッシュさせるためにリスタートして数周走ることはあっても、残り1時間44分から完全なリスタートを切ることはないと思っていた」

 時間制レースを採用しながら、当初のレース時間を超える形でリスタートするというのは、確かにWECの歴史上でも異例のことと言えた。ただそれと同時に、今回のようなケースは、レギュレーションの範囲内でもあった。

 規則書には「スチュワードは状況に応じて、レースタイム表示をストップ、もしくは変更するという決定を下す可能性がある。これは当初の競技時間(今回の場合は6時間)を延長するものであってはならない」と記されている。つまり今回スチュワードの裁量でレース時間を巻き戻したものの、実際の競技時間は6時間を超えていないため、規則の範囲内と解釈できる。

 またレース後にFIAから発表された声明文では、中断時間を除き、競技時間を6時間とするような裁定が下された背景には「6時間レースに向けて戦略を立てていた競技者にとっての公平性を確保した」ということがあったと説明されている。

 なお、ケメルストレートでの事故に関与したバンバーは赤旗の原因を作ったとして、次戦出場時に5グリッドのペナルティを科されることとなった。これにより、ダブルポイントとなる次戦のル・マン24時間レースでキャデラックの2号車は厳しい戦いを強いられることになる。