2024年、F1参戦4年目を迎えた角田裕毅(RB)が頼もしい活躍を見せている。例年以上にポイント獲得のハードルが高い勢力図となっている中でポイントを着実に重ねているのだ。

 今季はトップ5チーム(レッドブル、マクラーレン、フェラーリ、メルセデス、アストンマーティン)と、他5チームのパフォーマンス差が大きく、予選Q3進出や決勝でのポイント獲得が至難の業だというのは、すでに何度も耳にしていることだろう。

 そんな中で角田は、7戦で5度の予選Q3進出、4戦で入賞(マイアミGPではスプリントでも入賞)を果たし、15ポイントを稼いでいるのだ。

 この活躍で角田はドライバーズランキングでランス・ストロール(アストンマーティン)を上回り10番手、チームのコンストラクターズランキング6番手に大きく貢献している。

 振り返れば、角田の恩師と言ってもいいフランツ・トスト前チーム代表は、若いドライバーには3年の猶予を与えるべきだと語っていた。その言葉が正しかったことを証明するかのように、4年目の角田は大きく花開き、躍動している。

 RBのテクニカルディレクターであるジョディ・エジントンは、角田が天性のスピードを持っていることを認め、それ以外の部分での成長について、motorsport.comの独占インタビューで次のように説明した。

「我々が期待していた次なるステップの大部分を目の当たりにしていると言って良いと思う。彼の天性のスピードについては良く話題になるし、それは間違いなくある。だが彼が今やっているのは、週末をまとめることなんだ」

「彼はクルマに何を求めているのかがより明確になってきている。走行を重ねて経験を積めば積むほど、感覚をつかめばつかむほどね。そして彼はそれをすべてまとめているんだ。エンジニアリングの側面からそれを表現すると、彼は自分が何を望んでいるのかがより明確になっているということだ」

 そうした変化は、角田がマシンのパフォーマンスを引き出す上でも大きな効果を発揮しているとエジントンは見ている。

「フィードバックに優先順位をつけることで、彼は激しく議論をせずに対処できることを理解している。彼はクルマに何を求めるかについて、より良い見解を持っているんだ。クルマが良くなればそれを限界までプッシュし、次のステップを求めるのはドライバーとして普通のことだ」

「それとともに、彼はより幅広いマシンのセットアップに適応し、より幅広いサーキットに素早く適応できるようになると思う。彼は今、自分が何を望んでいるのかわかっているからね」

「コックピットの中でも外でも、何が重要で何が重要でないのか、そして週末をどのように組み立てればいいのか、彼はおそらく理解しているはずだ」

「彼は今、テスト項目を消化する能力がかなり高まっているし、我々はバックグラウンドでそれを見ているが、彼はあまりそれに大きくフォーカスすることなく、戻ってきて何が起こっているのかを伝えることができるんだ」

 またエジントンは、角田がタイヤの使い方、テスト能力でも進歩し、ミスも減っていると付け加えた。

「今のタイヤはドライバーにとってチャレンジングなモノであり、1周を通して熱の挙動をよく把握していなければ、その性能を最大限に引き出すことはできない」

「このタイヤは簡単に、すぐに壊れてしまうが、それも問題ない。彼はそのような部分を改善し、発展させてきている」

「そして全般的に、ミスが少なくなっていると思う。ミスといっても、誰が見てもわかるようなミスではないかもしれない。『ああ、あれはよくなかった』と本人が振り返るようなミスだ」

「彼はそうやって成長しているんだ。彼が平均でコンマ3秒速くなったとか、そういうことを言うつもりはない。そうではなく、チームと協力し、レースウイークエンドやシーズンを通して彼のパフォーマンスを向上させることが重要なんだ。これまで見てきた限りでは、彼がそうしていることを示唆する明確な証拠がある」

 こうした角田の活躍に驚いているかという質問にエジントンは、驚いてはいないがその進歩に満足していると語った。

「いいや。彼のペースは常にあった。期待通り彼は成長している。だがその成長ぶりには本当に満足している。彼が(僕を)驚かせたと言うのは不公平だと思うし、振り返って『良いクルマができたから驚いた』なんて言うかもしれない。でも、彼が今、本当に前進していることをうれしく思う」

「F1サーカスの外の人たちが、ドライバーの厳しさを理解するのはおそらくとても難しいと思う。エンジニアの軍団とふたりのドライバーを抱えるというのは、信じられないほど難しいことなんだ。彼はそれに対処すること、彼がより重要だと考えること、重要ではないと考えることをチームに指示するのも学んでいる」

「若いドライバーが、どんな情報を発信する必要があるのかを理解するのは、おそらく簡単なことじゃない。そして今、彼はそれを実践しているんだ。今年、彼がエンジニアに無線で伝える内容や、無線の使い方に対するアプローチが変わってきていることに気づいた。それは進歩の証だと思う」