F1第11戦オーストラリアGP決勝では、メルセデスのジョージ・ラッセルが波乱のレースを制した。RBの角田裕毅は14位だった。

 オーストリアGPの舞台はレッドブルリンク。その名の通りレッドブルのお膝元だ。山間部にあるサーキットではあるものの、今週末は天候に恵まれ、週末を通してドライコンディションでセッションが行なわれた。

 決勝日の6月30日(日)も、上空には雲が浮かんでいたものの日差しがサーキットを照らし、気温29度、路面温度48度というコンディション。ただ、風速2.3m/sと風が吹き付けるという状況だった。

 スタート時には、ピットレーンスタートを選んだキック・ザウバーの周冠宇を除き、ほぼ全車が新品のミディアムタイヤを履いた。アストンマーティン勢は皮むきを行なったユーズドタイヤを選んだ。

 19台がグリッドに並び、赤く灯った5つのシグナルが消え、71周の決勝レースがスタート。ポールからレッドブルのマックス・フェルスタッペンが抜群の伸びでホールショットを獲得。マクラーレンのランド・ノリスはラッセルの攻撃を凌いで2番手を守った。

 フェラーリのシャルル・ルクレールはオープニングコーナーでのポジション争いの中、マクラーレンのオスカー・ピアストリと接触してフロントウイングを破損し、ピットでの交換を余儀なくされた。

 2周目の順位はフェルスタッペン、ノリス、ラッセル、もう1台のメルセデスであるルイス・ハミルトンというトップ4。フェルスタッペンはスタートから快調に飛ばし、2番手ノリス以下との差を1周あたり0.5秒ずつ開いていった。

 メルセデス勢は3〜4番手を争ったが、ハミルトンはオープニングコーナーでコース外からフェラーリのカルロス・サインツJr.を抜いたとして調査対象に。ペナルティを回避するため、ハミルトンはサインツJr.に対して4番手を明け渡すこととなった。

 中団グループの中には、11周目と早い段階からピットへ入り、ハードタイヤを交換するドライバーも。第1スティントを長めに引っ張るドライバーとの間で戦略が分かれた。

 上位勢では21周目終わりに5番手ハミルトンなどからピットイン。サインツJr.を抜ききれないこともあり、アンダーカットを狙った。ただ、ハミルトンは痛恨のミス。ピット入口の白線を踏んだとして、後に5秒のタイムペナルティを科されてしまった。

 ハミルトンに反応してサインツJr.とラッセルも翌周にピットイン。首位フェルスタッペンや2番手ノリスも23周目にピットでタイヤを換えた。

 ピアストリが25周目終わりにピットへ入ったため、各車が1回目のタイヤ交換を完了。この時点でフェルスタッペンが首位につけ、ノリス、ラッセル、サインツJr.、ハミルトン、ピアストリと続いた。第2スティントではハードタイヤを履くのがセオリーだったが、上位勢で唯一ラッセルがミディアムタイヤを選択した。

 フェルスタッペンはピットストップの際、ファストレーンにいたノリスを妨害したとして、アンセーフリリースの疑いで調査対象に。これを受けてかフェルスタッペンはペースを上げたが、結果的にお咎めなしとの裁定が下った。

 1回目のピットストップで早めに動いたドライバーは40周目を前に2回目のピットへ。この頃、フェルスタッペンは「突然タイヤが悪くなった」と無線で訴えた。

 フェルスタッペンは、タイヤを換えたばかりの周回遅れのドライバーにせっつかれることとなり、51周目終わりにピットへ飛び込みユーズドのミディアムタイヤに交換。これに合わせてノリスもピットへ入り、新品のミディアムタイヤを履いた。

 ここからレース展開は大きく変わった。

 レッドブルはフェルスタッペンのピット作業に手間取り、約3秒をロス。これに気を取られたかフェルスタッペンはターン4でタイヤをロックアップしてしまい、一気にノリスとの差が縮まった。

 レース中盤までは、レースペースの面でフェルスタッペンに分があるように見えたが、ノリスはファステストラップを連発して激しく攻め立て、54周目には2台の差がDRS圏内に。フェルスタッペンを射程圏内に捉えた。

 フェルスタッペンは周回遅れのマシンをかき分け、ノリスを振り切ろうとするも「マシンが何かおかしいよ。グリップがない!」と悲痛の叫び。食らいつくノリスは59周目のターン3でフェルスタッペンのインを差したが、ここでは止まりきれず。バトルはポジションを戻しての仕切り直しとなった。

 61周目にノリスはターン4で首位を狙ったがフェルスタッペンは徹底ディフェンス。フェルスタッペンとノリスは、無線を通じてお互いの動きに対して罵り合った。

 ノリスは63周目にターン3で再びフェルスタッペンのインに飛び込んだものの、フェルスタッペンは「押し出された」として首位を譲らず。翌周にはノリスが今度はターン3でアウト側から仕掛けた。

 しかし、ここでフェルスタッペンの左リヤタイヤとノリスの右リヤタイヤが接触。これで両者がパンクを喫し、トップ2台は優勝戦線からまさかの脱落となった。

 低速で走行する2台の横を抜け、トップに立ったのはラッセル。ピアストリとサインツJr.が表彰台圏内に浮上した。

 ラッセルはそのままチェッカーまで逃げ切り、F1キャリア2勝目を挙げた。メルセデスとしても現行レギュレーションで2勝目。“棚からぼた餅”状態とは言え、チームにとってはこれが勢いを生む起爆剤となるかもしれない。

 2位はピアストリ。予選3番手タイムをトラックリミット違反で失っていなければ、また違った展開もあったかもしれないと悔やんだ。3位にサインツJr.が入り、降ってきた幸運を噛み締めた。

 4位にハミルトン。フェルスタッペンはノリスと接触の原因を作ったとして10秒のタイムペナルティが科されたが、結果的に5位フィニッシュとなった。

 フェルスタッペン以下は、ハースのニコ・ヒュルケンベルグ、レッドブルのセルジオ・ペレス、ハースのケビン・マグヌッセン、RBのダニエル・リカルド、アルピーヌのピエール・ガスリーというトップ10だった。ノリスは完走扱いのリタイアだ。

 角田は中団グループの中で、ミディアムタイヤでの第1スティントを引っ張るという僚友リカルドとは異なる戦略を採り、その後ハードタイヤを2セット使用したが14位フィニッシュとなった。