大人になった今ではそうでもないけど、子供の頃にはとても怖いと思っていたもの......読者の皆さんにもそういった存在が1つくらいはあるだろう。

2024年4月、そんな「子供のころのトラウマ」がまさかのグッズ化を果たしたというニュースが、X上で注目を集めている。

ついにグッズ化!(画像は名古屋港水族館提供、以下同)

それが、愛知県名古屋市の名古屋港水族館で4月20日に発売された「古代の潜水服ブックマーク」だ。

彼らの正体を知らない人からすると、「水族館のマスコットキャラクターか何かかな?」くらいの印象だろう。

それぞれに違うデザインの茶色い潜水服を着たユニークな2人組で、、むしろ真ん丸の目玉なんかには可愛さを感じる、という人もいるかもしれない。

一方、彼らの「元ネタ」を知るXユーザーたちからは、グッズ化に対してこんな声が寄せられている。

「幼少期のトラウマ。未知の方はぜひとも写真を検索して欲しい」
「スロープを駆け上がる子どもたちを一瞬で泣かせるあの2人が!?」
「みんなのトラウマと名高い古代の潜水服じゃん! 欲しい!w」
「これをグッズ化するとはッ! 名古屋港水族館いいぞー!!」

どうやら2人は「みんなのトラウマ」「子供が泣く」などと恐れられている存在らしい。ただ、それと同時に愛されてもいるようで、グッズ化を歓迎する声は多い。

一体、彼らは何者なのか? その素性を知るため、Jタウンネット記者は19日、名古屋港水族館に話を聞いた。

ナニモノなんですか?

取材に応じた同館職員によると、「古代の潜水服ブックマーク」のモチーフになっているのは、南館2階の「深海ギャラリー」エリア内の深海スロープにある2体の人形だ。

実物がこちら。写真左が「ディエゴ・ウファノの潜水服(空気外部供給型)」、右が「クリンゲーツの潜水服(空気持ち込み型)」

2体は1992年の開館当初から展示されているもので、いずれも17・18世紀の地中海で使用された潜水服の複製を装着している。

頭頂部から触手のようなものが生えている方の潜水服は、「ディエゴ・ウファノの潜水服(空気外部供給型)」。かつて、難破船からブロンズ製の大砲を取り出す際に使用されたという、油を引いた革製の防水服だ。

ディエゴ・ウファノの潜水服。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵からヒントを得て発明された

長い導管が水面まで出ていてダイバーが呼吸できるようになっている。そしてフードの部分に眼鏡が。そこから覗く目、こわ......。

クリンゲーツの潜水服。レトロなロボットっぽい雰囲気

もう一方のちょっとずんぐりした潜水服は、「クリンゲーツの潜水服(空気持ち込み型)」。こちらは1797年、深さ20フィート(約6メートル)の河川の浚渫(しゅんせつ:水底の土砂などを掘る工事)をする際に使用されたそうだ。

チューブを通して空気を吸い込み、口の部分に付いているバルブを通して別のチューブから吐き出す仕組み。筒型のパーツを高密度に組み合わせて水圧に耐えられるように設計されているという。手足が露出しているので、胴体と頭だけが機械に乗っ取られているみたいだ......。

親に抱っこされ、見ないように目をつぶる子供も

そんな2体の展示場所は、薄暗い上にスロープの曲がり角。そのため、来館者視点ではライトアップされた人形が急に視界に入ってくることになり、驚く人が非常に多いという。

また、古代の潜水服という見慣れない服装な上、作業用の手斧を持っているという異質さ、よく見るとマスクの下にちゃんと目も見えるようになっているリアルさなどから、特に小さな子供は怖がるそうだ。

「親御さんに抱っこしてもらって眼をつぶって通る、もしくはそこを通らずに他のエリアへ行く、などされる方も実際にいらっしゃいます」(水族館職員)
画像は再掲

そんな、子供たちにとっては恐怖の対象であり、水族館側でもそのことを把握している彼らをグッズ化するに至った理由は何だったのだろうか?

同館職員は説明する。名古屋港水族館を訪れた記念としてSNS上に投稿される写真に、潜水服のものが多いことにと気づいた、と。

そして「今までにないインパクトのあるオリジナル商品を作りたい」と考えていた同館はこれに着目。注目度の高い「古代の潜水服」グッズの制作を決め、館長監修のもと数年がかりで構想を練り、2024年についに念願の第1弾の発売に至った。

「強烈なインパクトを残す展示のため、開館して30年以上が経つ今、当時子供だった方々が大人となり、思い出として愛着を感じてくださっているのではないかと思います。
今後はグッズをシリーズ化し、商品を増やしていきたいと考えています」(水族館職員)

「みんなのトラウマ」であると同時に「みんなの思い出」でもある古代の潜水服コンビ。これから制作されるだろう彼らの新グッズたちにも要注目だ。

ちなみに、彼らが展示されているエリアでは、19世紀に近代海洋調査の基礎を作った英国の調査船・チャレンジャー号の調査結果をまとめた「チャレンジャー・レポート」の中にある、深海生物の精密画なども紹介している。

「海底に挑み続ける人類のチャレンジ精神を感じられるエリアになっています」とのことなので、子供時代の怖い思い出しかない読者は、もう一度彼らに会いに行ってみては?

成長したからこそ感じられるワクワクやロマンが、2人と共に待っているに違いない。