神奈川県は、電動自走式ロープウエーの開発を進めるベンチャー企業「ジップ・インフラストラクチャー」(本社・福島県南相馬市)と新たな交通サービスの実用化に向けた連携協定を結んだ。

 同社が開発中の自走式ロープウエー「Zippar(ジッパー)」は自由にカーブや分岐の設定が可能で、地上の交通手段よりも低コストかつ工期が短く済むのが特長。渋滞の影響を受けず、遅延のない定時運行への期待も高く、公共交通機関としての要素を備えている。

 須知高匡(たかまさ)社長(26)は2027年にテーマパークなどでの実用化を目指しており、同年に横浜市で開催される国際園芸博覧会(園芸博)での活用にも意欲を示す。公共交通機関としては29年の運行開始を目指す。

 同社は須知氏が慶大在学中の18年7月に起業。19年2月に自走式ロープウエーを神奈川県主催の「学生ビジネスプランコンテスト」で提案し、知事賞を獲得した。その後、秦野市に本社を構えて市内に建設した実験線で走行試験を重ねるなど、実用化への取り組みを進めてきた。今年3月に福島県に本社を移したが、秦野と横浜に支社を置く。

 同社にとって広域自治体との協定は初。ジッパーの特長を踏まえ、神奈川で導入する際の適地を技術的に研究していく。

 4月30日の締結式で須知氏は「渋滞や運転手不足などさまざまな交通課題がある中で、ジッパーの活躍する分野がきっとある」と話した。黒岩祐治知事は「世界から注目される神奈川発の画期的な技術。神奈川での実用化に向け、具体策を探りたい」と述べた。