いよいよ、ゴールデンウィーク!ハイキングやキャンプなど、アウトドアを楽しむ方も多いと思います。そこで気をつけていただきたいのが、ダニに刺されたことによって起こる「ダニ媒介感染症」です。2024年に入っても、国内の各地で感染の報告があがっており、命に関わる場合もあります。

【2024年】4月に注意してほしい感染症!RSウイルス感染症徐々に増加 麻しん(はしか)流行に注意 医師「春休み明けもインフルエンザ下がり切らない懸念」(https://www.youtube.com/watch?v=eHv5UwRP8YQ)

ダニ媒介感染症とは?

ダニ媒介感染症とは、ウイルスや細菌などを保有しているダニに刺されることによって起こる感染症のことです。ダニは野外の様々な場所で生息していて、野外作業や農作業、レジャーなどでダニに刺されることで、ダニ媒介感染症を発症することがあります。

マダニはこれからが活動が盛んな季節

特にマダニは、春から秋にかけて活動が盛んになり、注意が必要です。マダニはシカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く生息していて、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道などにも生息しています。マダニは様々な細菌やウイルスを保有していて、マダニに刺されることによって、日本紅斑熱、Q熱、ライム病、ダニ媒介性脳炎、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの感染症になるおそれがあります。

日本紅斑熱

その中でも代表的な感染症が日本紅斑熱です。病原体は細菌よりも小さな「リケッチア」で、ダニに刺咬されることによって感染します。潜伏期は2〜8日で、症状としては頭痛、発熱、倦怠感があります。軽い感染症ではなく、年間に200件を超える発生報告があり、2022年には、広島県で農作業中にマダニに咬まれた70代の女性が日本紅斑熱で亡くなっています。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

また、SFTSウイルスによる重症熱性血小板減少症候群の発症の可能性もあります。主に西日本を中心に患者が発生していて、潜伏期は6〜14日。症状は発熱・消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)などで、ときに腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状を伴うことがあります。また、血小板減少、白血球減少、血清酵素上昇がみられ、致死率は10〜30%となっています。SFTSは主にマダニに咬まれることによって感染しますが、感染した犬や猫の体液への直接接触でも感染することがあります。また、今年3月には、医療機関でヒトからヒトへの感染が日本で初めて報告されています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「ゴールデンウィークで、アウトドアを楽しむ方も多いと思いますが、マダニに咬まれると、命に関わる感染症にかかる可能性があります。気持ちのいい季節になりましたが、野外活動をする際には、肌の露出を抑えるなど、咬まれない工夫をすることが重要です。仕事やキャンプ・登山などで野山に入ったあと、発熱・発疹があり、刺し口が確認された場合は、SFTSや日本紅斑熱など、マダニ媒介の感染症を疑う必要があります。症状は、熱が下がらずしんどい状態が続き、きちんとした診断と治療がなければ命に関わる場合もあります。日本紅斑熱の治療には、テトラサイクリン系の抗菌薬が、効果があるとされていますが、SFTSの場合は対症療法が主体となります。不安な方は医療機関を受診してください。マダニには、年齢は関係なく咬まれる可能性があります。野山に入る際は、ダニ除けに効果のある防虫スプレーをこまめに使うのも一つの手です」と語っています。

マダニから身を守る服装とは?

マダニから身を守るためには、極力首・腕・足など肌の露出を少なくすることです。首にはタオルを巻くかハイネックのシャツを着用する。軍手や手袋を着用して、シャツの袖口は手袋の中に入れる。シャツの裾はズボンの中に入れる。ハイキングなどで山林に入る場合は、ズボンの裾に靴下を被せる。農作業や草刈りなどでは、ズボンの裾を長靴の中に入れるなどの工夫が重要です。

マダニから身を守る方法とは?

また、野外活動から帰った際は、家の中にマダニを持ち込まないようにすることが重要です。家の中に入る前に上着や作業着などはらって、マダニを落とす。またガムテープなどを使って服についたマダニを取り除く方法も効果的です。家に入ったあとは、すぐにシャワーや入浴をして、マダニがついてないかどうかチェックしましょう。また、マダニは長時間吸血することがあり、吸血中に無理やり取り除こうとすると、口器が皮膚の中に残ることがあります。マダニに咬まれたときは、皮膚科などの医療機関でマダニの除去や消毒などの適切な処置を受けてください。

引用
国立感染症研究所:日本紅斑熱とは、マダニ対策、今できること(パンフレット)
厚生労働省:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスの患者から医療従事者への感染事例について(事務連絡:令和6年3月19日)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏