富山県高岡市伏木東一宮のパティシエ、吉川奈美さん(40)は自宅横に洋菓子店「la liberte NAMI(ラ・リベルテ・ナミ)」を開いた。能登半島地震の影響でオープンが遅れたものの、「子どもたちのためにも、伏木を廃らせたくない。伏木の元気な姿を発信したい」とスイーツ作りにまい進する。

 吉川さんは伏木曳山(ひきやま)祭で夫の武寿さん(46)と出会い、2010年、結婚を機に石川県川北町から高岡市伏木地区に移住。調理専門学校で菓子作りを学んでいたことから、氷見市のレストランで働いた後、フリーのパティシエとして県内各地で活動してきた。

 「伏木ってすごくいいところなんですよ」と吉川さんは顔をほころばせる。4男1女の子どもたちは祭りが盛んな地元が大好き。吉川さんは伏木小学校のPTA会長も務めており、住民の協力に日々助けられているという。

 だが、「伏木は何もない」という周囲の声が気になっていた。ママ友が気軽に集う場所をつくり、地域ににぎわいを生み出したいとの思いから、高岡市のふるさと納税型クラウドファンディング(CF)を活用して店を構えることを決めた。

 昨年12月にCFの目標を達成し、準備を進めていた矢先、地震に襲われた。自宅は断水し、店舗の建設資材も手に入らなくなった。「ここでやめたら、もうお店をつくる機会はなくなる。やるしかないと思った」と振り返る。

 予定より約2カ月遅れた5月末、念願の店がオープンした。ショーケースには県産の果物をふんだんに使ったこだわりのケーキが並ぶ。7月下旬にはJR伏木駅前に2号店となるカフェを開く予定だ。

 地震で液状化現象の被害を受けた伏木地区では、地区外へ引っ越しを余儀なくされる住民も少なくない。吉川さんは「伏木は前を向いている。まずは伏木に来てもらって、いいところだと知ってほしい」と話す。