通話しながらATMを操作する高齢女性(78)に気付き連携して詐欺被害を防いだとして、兵庫県警尼崎東署は10日、いずれも尼崎市の運送業野本真由美さん(51)と大阪国際工科専門職大学3年山田直寛さん(20)に署長感謝状を贈った。(池田大介)


 3月中旬の夕方、阪急電鉄園田駅前の無人ATMで野本さんは現金を引き出したついでに、久しぶりに通帳を記帳していた。終わるのを待っていると、「キャッシュカードを持って来ました」と女性の大きな声が聞こえてきた。振り返れば、女性がしゃがみ込んで電話をしている。特に気にはならなかったが、女性はATMの前に来て操作を始めた。

 「残高照会ですか」「数字が出てきました」。通話内容から詐欺の可能性が高いと判断して声をかけるも、「大丈夫です」と女性は落ち着いた様子。「本人がそう言うなら」とその場を去ろうとしたが、心配になって電話を代わった。

 電話口からは銀行員を名乗る男が「振り込み方法を教えています」「ご本人に代わってください」などと丁寧な口調で説明。しかし、野本さんは「振り込み方法を教えていたのなら残高を聞くのはおかしい」と詐欺と確信し、すぐに電話を切った。しかし、何度も何度も電話がかかってくる。

 野本さんが戸惑っていると、その場にいた山田さんが声をかけてきた。「僕がやりますよ」。山田さんは手際よくスマートフォンを通信できない状態にして、着信拒否に設定。念のために番号を調べてみるも、その番号は見つからなかったという。

 山田さんがスマホを操作している間に、野本さんが110番。「私がだまされるとは…」と動揺する女性をなだめながら、駆け付けた警察官に事情を話した。帰り際、女性は2人に対して「おかげで助かりました」と頭を下げた。

 感謝状を受け取った野本さんは「女性が悔しい思いをせずに済んで本当によかった」。山田さんは電子機器に関心があり「自分の知識が思わぬ形で生かせた」と笑顔だった。