名前を使われた著名人たちが声を上げるも、一向に削除されずSNS上に放置され続ける「有名人なりすまし詐欺」広告。「なりすまされた」側の前澤友作氏はフェイスブックとインスタグラム運営元のメタ社を告訴する意向を示していますが、事態は動くことになるのでしょうか。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では著者の多田さんが、偽投資詐欺グループが被害者を陥れる際に用いる「3段階の信頼性」工作を紹介。さらに今後、「なりすまし詐欺」の被害拡大の懸念すら抱かざるを得ない理由を解説しています。※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:なぜ有名人をかたる広告で投資詐欺に遭ってしまうのか?三段階の信頼性の工作がひそむ・旧統一教会の関連団体・世界平和女性連合が七人の弁護士を訴えた裁判が早々に結審

なぜ有名人をかたる広告で投資詐欺に遭ってしまうのか?三段階の信頼性の工作がひそむ

この詐欺の手口では、三つの信頼性をもたせることで騙す手立てが使われています。

一つ目の信頼は、大手のフェイスブックに出てきた広告だから、安心な情報と思わせて、広告の先にあるサイトにアクセスさせる点です。

二つ目の信頼性は、有名人の写真などを勝手に使い、メディアで見た著名な人が勧めているという信頼性を持たせて、投資グループに参加させます。

そして、詐欺の本丸である偽の投資サイトに誘導するわけですが、このサイトへの信頼性を勝ち取るための手段として、利用者がサイトに登録して少額の投資させた後に、儲かったお金を、本人の口座に戻します。

これが三つ目の信頼性です。これにより、出金の手続きをすれば、お金が戻ると思っていまい、利用者は多額のお金を投じてしまいます。

ホップ、ステップの二段階の信頼性を使ったうえで、投資をさせるという重要な三段階目のジャンプの場面で「お金を戻す」という手立てで信頼を勝ち取る工作を行います。これにより利用者の多くはここが詐欺サイトだとは思わなくなってしまいます。

犯罪収益金のリターンを大きくするため、企業から人へのなりすましに転じてきた

偽投資詐欺のグループの拠点は海外にあると考えられています。今や、広告費用などの先行投資をして、詐欺を行うのは当たり前になっていますが、その始まりは、有名ブランドをかたった偽通販サイト詐欺にあると考えています。

以前から、SNS上にはこの種の詐欺につながる広告が平然と出ていて、いくら通報しても、運営社側で詐欺広告を排除する動きはありませんでした。そうしたなかで、かたるものを企業から人へと変えてきたわけです。

偽通販サイトでは、相手から騙し取るお金は1万円ほどで、広く浅くの手口でしたが、偽の投資サイトへの誘導をすることで、狭く、深く数千万円、億ものお金をとることができることになりました。

つまり「企業から人へ」と変えてきた大きな理由は、犯罪収益のリターンを大きくするためです。

4月24日のニュースでも、70代女性が7億円近い金額を騙し取られた被害が報道されましたが、本人が騙されていると気づくまで、永遠にお金を取り続けられる手段を考えてきたわけです。

詐欺グループの手口の進化させてしまったのは、SNS上の詐欺広告を規制することなく、垂れ流し続けてきた結果であると思っています。

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詐欺被害へ危機意識のないメタ社の声明とみる理由

詐欺グループはメタ社のフェイスブックやインスタグラムの広告に注力している傾向がみられます。

そのなかで、メタ社は「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」の声明を4月16日に出しました。

2016年以降、チームと技術に200億ドル以上を投資してきました。これには詐欺対策も含まれ、プラットフォーム上の利用者を詐欺から守るための多面的な対策を講じています。

オンライン上の詐欺が今後も存在し続けるなかで、詐欺対策の進展には、産業界そして専門家や関連機関との連携による、社会全体でのアプローチが重要だと考えます。

しかしこれを見て、詐欺グループの広告がはびこっている理由がよくわかりました。長くSNS上の詐欺広告にアクセスしてきていますが、メタ社に通報しても削除されるどころか、同じような広告が出て続けており、まったく対策がなされない状況です。

そうしたなかで「多角的対策を講じている」との言葉には説得力がありません。また「社会全体でのアプローチが重要」は、まるで他人事で、これまで多大な被害を出してきた責任と自覚のなさがこの言葉からもわかります。この危機意識の足りなさは、被害の拡大をさらに引き起こす懸念すら感じています――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2024年4月28日号の一部抜粋です。続きは初月無料のお試し購読をご登録後、4月分のバックナンバーをお求めの上お楽しみください)

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