「海の貴婦人」とも呼ばれる練習帆船「海王丸」が20日、5年ぶりに神戸港から遠洋航海に出航した。実習生らがマスト上で感謝の意を表す最高儀礼「登檣礼」(とうしょうれい)を披露。外洋への初航海を前に期待と不安を胸にした若者たちが、「ごきげんよう」のかけ声を響かせた。

 海王丸は海技教育機構の帆船。神戸を出てシンガポール港に寄港し、6月5日に東京港へ戻る。同機構では2018年、登檣の訓練中に実習生が死亡する事故が発生したことなどを受け、同儀礼を長らく行っていなかったが、今回6年ぶりに復活した。

 出航式では制服やスーツに身を包んだ実習生69人が参加。船長らの訓示に真剣な表情で耳を傾けた。その後、素早くマストへ上り、岸壁に集まった観客たちへ大きく手を振り神戸に別れを告げた。

 「長い航海になるが大きく成長して帰ってきたい」と実習生の森林凜さん(22)。同機構への就職も決まっているといい「教える側になることを意識して、先輩たちの知識や技術を吸収する」と晴れやかな表情を見せた。(森下陽介)