SUVとセダンを融合させたクルマが29年前に登場していました。そんな三菱「ギャラン スポーツ」を紹介します。

「クラウンクロスオーバー」よりも前に登場していた

 スタイリングや機能性などの面から、セダンとクロスオーバーSUVは対照的なモデルといっても過言ではありませんが、2022年9月に発売されたトヨタ「クラウンクロスオーバー」ではその2つを融合させたまったく新しいモデルとして登場し、大いに話題になりました。
 
 しかし実は遡ること29年前、三菱からセダンとSUV、さらにはスポーティさの3点をミックスした「レアモデル」が登場していました。

 三菱ギャランは1969年に「コルトギャラン」として登場以来、ヨーロピアンテイストあふれる4ドアスポーツセダンとして展開してきました。

 1992年5月には7代目がデビューし、ワイドトレッド・ロングホイールベース化を図り、居住空間の拡大と存在感のある大きなボディとなりました。

 また、電子制御オートマチックトランスミッションや角を落とした新しいデザインなどを特徴とします。

 そして1994年8月、この7代目ギャランをベースとする新モデル「ギャラン スポーツ」が登場します。

 1990年代初頭はキャンプやスキー、スノーボードといったアウトドアが流行し、それによって本格四輪駆動車を中心とした「RVブーム」が巻き起こりました。

 三菱でも2代目「パジェロ」がブームのけん引役となって大ヒットを記録しました。

 このRVブームにあやかるため、各メーカーからクロカン車のイメージを取り入れたクロスオーバーSUVのようなモデルが数多く登場したなかで、ギャラン スポーツも投入されました。

 実はこのギャランスポーツは4ドアセダンではなく、7代目ギャランの欧州市場向けモデルに設定されていたセダンベースの5ドアハッチバックから派生したものでした。

 エクステリアは遊び心あふれるタフなスタイルとなり、スポーティなクーペ風のフォルムと共に、ベース車とは大きくイメージを変えています。

 フロントには当時の本格四輪駆動車で流行していたバンパーガードを装着し、屋根にはルーフレールを装備。さらにボディカラーには2トーンカラーを設定するなど、ワイルドさを演出。

 その一方で、リアハッチには大型のスポイラーが装備され、スポーティさもアピールしています。

 パワートレインは最上級モデル「SPORTS GT」に最高出力240馬力・最大トルク31.5kgm(5速MT)を発揮する2リッターV型6気筒DOHCツインターボエンジンを搭載。

 駆動方式もフルタイム4WDシステムが組み合わされるなど、パワートレインはギャランのハイパフォーマンスモデル「VR-4」と全く同一のものを採用。

「『GT』の持つスポーティな走りと『RV』の持つ遊び心の両方を満たす『GTRV』」のキャッチコピー通り、街にもリゾートにもフィットする高性能GTカーというコンセプトを提案したモデルでした。

 なお、バンパーガードを装備せず、自然吸気の2リッターV型6気筒エンジンを搭載するおだやかな「SPORTS」グレードも設定していました。

 質実剛健な存在のギャランに、流行を追いかけたデザインを組み合わせた意欲的なモデルでしたが、販売台数は低迷を極めます。

 1996年に8代目ギャランが登場すると消滅し、販売期間はわずか2年ほどと短命に終わりました。

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 中古車でも2023年5月末現在、掲載されているギャラン スポーツは0台。もしギャラン スポーツを探しているのであれば、見つけたタイミングで早々に動いたほうが良さそうです。