トラックやバスの運転に必要な大型・中型免許などに関して、警察庁は2026年以降に順次「AT限定」免許を導入する方針を固めました。

大型・中型免許に「AT限定」免許を導入!その背景とは

 警察庁は2026年以降、トラックやバスの運転に必要な大型・中型免許などに関して順次「AT限定」免許を導入する方針を固めました。
 
 では、これには一体どのような背景があるのでしょうか。

 最近は、大型トラックやバスといった職業ドライバーの不足が指摘されています。

 2022年9月に経済産業省や国土交通省、農林水産省が公表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、物流を担うトラックドライバーは人手不足に加え、他の産業と比べて平均年齢が3-6歳程度高いことが明らかになっています。

 さらにトラックドライバーは労働時間や業務負担などから65歳以上の就業者の割合が低く、2028年度には約27万8000人ものドライバー不足が懸念されます。

 バスドライバーに関しても少子高齢化の影響などから人手不足に陥っており、公益社団法人日本バス協会の試算ではこのまま人員が確保できなかった場合、2030年に3万6000人のドライバーが不足する見込みです。

 このような問題への対策として、警察庁は2024年4月18日、トラックやバスなどの運転に必要な大型免許、中型免許などに「AT限定」免許を2026年以降導入する方針を明らかにしました。

 一般的にAT限定免許はMT免許に比べて取得が容易と言われており、これまでAT限定免許がなかった大型免許や中型免許などに導入することで、より多くの人の免許取得をうながすねらいがあります。

 また近年では普通乗用車だけでなくバスやトラックにもAT車が普及し、AT限定免許へのニーズが高まっていることも、この取組みを後押しする要因といえるでしょう。

 運転免許には公道で車両を運転するための第一種免許と、人を乗せて運賃を得る旅客運送に必要な第二種免許がありますが、次の5つの免許種別にAT限定免許が導入される予定です。

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 ●大型免許
 車両総重量11トン以上、最大積載量6.5トン以上、乗車定員30人以上の自動車を運転可能(大型トラックなど)

 ●大型第二種免許
 乗車定員が30人以上の路線バス、観光用バスなどの運転が可能

 ●中型免許
 車両総重量7.5トン以上11トン未満、最大積載量4.5トン以上6.5トン未満、乗車定員11人以上29人以下の自動車を運転可能

 ●中型第二種免許
 乗車定員29人以下のマイクロバスや福祉車両などが運転可能

 ●準中型免許
 車両総重量3.5トン以上7.5トン未満、最大積載量2トン以上4.5トン未満、乗車定員10人以下の自動車を運転可能
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 これまでAT限定免許が取得できる四輪車の免許は普通免許と普通第二種免許のみでしたが、大型・中型・準中型免許にも拡大されることになります。

 なお、このAT限定免許の導入は中型・準中型・中型第二種免許については2026年4月1日、大型免許は2027年4月1日、大型第二種免許は2027年10月1日から運用が開始される予定です。

 これに対してSNS上では「免許の幅を広げることは賛成」「AT車が主流になってきているので良いと思う」といった反響があった一方、「運転技術の低下によってトラックの事故が増えそう」「現状はATの大型車が少ないので、免許を取ってもしばらくは使えないのでは?」といった意見が聞かれました。

 加えて「人手不足への根本的な解決にはならない」「法改正も良いが運転手の給料を上げるべき」など、運転手の待遇改善を求める声も寄せられています。

 警察庁はAT限定免許の導入に際し、道路交通法施行規則の改正案についてパブリックコメント(意見募集)を受け付けた後、改正を進める方針です。

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 職業ドライバーの不足を巡っては、政府が2024年3月、外国人でも就業しやすいよう在留資格の特定技能制度に「自動車運送業」を追加することを閣議決定しています。

 AT限定免許の導入をはじめ各種対策に実効性があるかどうか、今後もその動向を注視する必要があるといえるでしょう。