公正取引委員会は15日、人件費などのコスト上昇分を取引価格に上乗せする価格転嫁を巡り、下請け業者と協議せずに据え置くなどしたとして、ダイハツ工業など計10社を公表した。独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」につながる恐れがあると判断した。自動車業界では日産自動車による「下請けいじめ」が発覚したばかりで、公取委の指摘は改めて大手の立場が強い業界体質の改善を迫ることになる。

 物価高の中、今春闘では大手企業で高水準の賃上げが相次ぐ一方、中小企業は価格転嫁が進まず、賃金上昇の原資が乏しいと懸念されている。公取委は社名の公表で自発的な協議を促す狙いだ。

 10社には三菱ふそうトラック・バスも含まれた。他は京セラ、西濃運輸など。価格交渉の場で「相当数の取引先について協議を経ない据え置きなどが確認された」という。

 調査対象は2022年6月〜23年5月に実施された取引分。対象企業の一部では今回の調査を受け、価格転嫁の協議が実施された例もあるとしている。公取委の担当者は「公表によって価格転嫁を後押ししたい」と強調した。