5月に入った京都、滋賀は、早くも真夏を思わせる気温の高い日が続いている。エルニーニョ現象などの影響で、6〜8月は35度以上の「猛暑日」が増える見込みという。今年も暑さへの備えが欠かせない。

 環境省が先月末から、「熱中症特別警戒アラート」の運用をスタートさせた。重大な健康被害が生じる暑さが予想される場合に発表し、最大限の注意を促す。

 2021年からは、熱中症のリスクが高まった際に「熱中症警戒アラート」を発表しているが、特別アラートはその上位と位置付ける。過去に例のない、広域的で危険な暑さを想定している。

 総務省消防庁によると、昨年5〜9月に熱中症で救急搬送された人は全国で9万人超に上った。京都府で2千人超、滋賀県で約千人に上る。近年はほぼ毎年、全国で千人超が熱中症で亡くなっている。

 専門家は「酷暑が引き起こす熱中症を新たな自然災害と捉えるべき」と警鐘を鳴らす。地震や風水害などへの備えと同様に、熱中症にも防災・減災の考え方を取り入れ、社会全体で対策を進めねばならない。

 特別アラートは、気温や湿度などから算出する翌日の「暑さ指数」が、都道府県内の全地点で35以上になると予想された場合に出される。高齢者や乳幼児への配慮、暑さ対策を徹底できない運動や催しの中止・延期などを呼びかけるという。

 熱中症での搬送事例は例年、65歳以上の高齢者が半数以上を占めている。発生場所別では、住居が全体の4割で最も多い。高齢者がエアコンの使用を我慢し、夜間に搬送されるケースも少なくない。幼い子どもは体温調整が未発達で、表情などから体調の変化に注意したい。

 市区町村は、冷房を備えた公共施設などを一時的な避難施設(クーリングシェルター)として指定し、特別アラート発表時にそれらを開放することが求められている。商業施設など民間にも協力を呼びかけて避難施設の確保に努めるとともに、ためらわず利用できる施設であることを周知する必要がある。

 私たちも、熱中症予防への意識を一段高めたい。特別アラートのベースになる暑さ指数に注目するのも有効だろう。

 暑さ指数は数値が大きいほど熱中症のリスクが高く、指数28で「全ての生活活動で熱中症が起こる危険性」があるとされる。現在の指数や予報値は環境省のホームページなどで確認できる。

 日本スポーツ協会は、指数が28以上で激しい運動は中止、31以上で運動は原則中止とする指針を示している。だが、「それではほとんど夏の活動ができなくなる」などとして部活動を続けている学校もあるという。

 正しい知識を元に対策をとれば、熱中症から命を守れることを社会で共有したい。