「タケノコ」の旬はいつ?

 春の味覚を代表する「タケノコ」。漢字の「筍」は、一旬(いちじゅん=10日間)で竹になる成長の早さから名づけられたとか。それほど旬のタケノコが、おいしい時期は限られた期間。ところで、期間限定の「生タケノコ」と一年を通じて手に入る「水煮タケノコ」では、栄養価やおいしさは違うのでしょうか? この記事では、そんな疑問に迫ってみたいと思います。

 タケノコは、竹の地中茎から地上に伸びた若い芽の部分。実は竹にはさまざまな種類があり、春に野菜売り場に出回る食用タケノコの多くは、ずんぐりとしたフォルムが特徴の「孟宗竹(もうそうちく)」と呼ばれる品種です。一般的には3月ごろから九州地方で収穫が始まり、桜前線のように産地が北上し、5月ごろまで収穫されます。「朝掘ったらその日のうちに食べろ」と言われるほど、収穫後は時間の経過とともに鮮度が低下してしまいます。

▲タケノコの中では珍しい秋が旬の「四方竹」。アクが少ない特徴があります。

 なお、孟宗竹(もうそうちく)以外の食用タケノコの品種として、5〜6月が旬の淡竹(はちく)、根曲がり竹、真竹(まだけ)、秋が旬の四方竹(しほうちく)などがあり、いずれも孟宗竹よりも細めです。

▲下ゆでした、旬のタケノコ。1/2本分で250〜300g程度(実測値)」

「タケノコ」に含まれる栄養の特徴は?

 タケノコの栄養ポイントは、ミネラルであるカリウムの豊富さ。カリウムは体内の水分や筋肉の動きをコントロールする働きがあり、不足すると、むくみや筋肉のけいれんを起こしやすくなります。また、味覚を正常に保ち重要なホルモンを手助けする働きがある亜鉛も野菜類の中では多めです。

 不溶性食物繊維のセルロースも豊富で、独特のシャキシャキした食感のもとにもなっています。不溶性食物繊維には、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促す働きがあります。

 さらに、肉や魚ほどではありませんが、たんぱく質が野菜の中では多いことも特長。うま味の成分であるアミノ酸のグルタミン酸やアスパラギン酸も含まれています。

▲生タケノコ(ゆで)・水煮の栄養価の違い(可食部100gあたり)

「生タケノコ」と「水煮タケノコ」の栄養価の違いは?

 旬の「生タケノコ」と通年手に入る「水煮」では、栄養が違うのでしょうか。一般家庭では生食ではなく下ゆでして料理する場合がほとんどなので、生タケノコをゆでた場合と水煮で、注目栄養素の違いを比較したいと思います。

 特筆すべきは、カリウムとビタミン(葉酸もビタミンの一種)含有量の変化。どちらも水溶性のため、「水煮」の場合は栄養が流出により減ってしまいます。また、食物繊維と亜鉛も「水煮」の場合は減少しています。さらに、アミノ酸のグルタミン酸とアスパラギン酸も「水煮」より旬の「生タケノコ」の方が多く、うま味を感じやすいといえるでしょう。

 ちなみに、カリウムは腎臓疾患がある人にとって、とりすぎに注意したい栄養素の一つ。旬の「生タケノコ」の食べすぎに注意し、たくさん食べたい時は「水煮」を選ぶのが無難です(詳しくはかかりつけ医の指示に従ってください)。

節と節の間の「白い粒」は食べても大丈夫?

 下ゆで後のタケノコや水煮の節の間や表面に、白いダマのような粒が残っていて、取り除くべきか迷う場合がありませんか。この白いダマは「チロシン」と呼ばれるアミノ酸の一種で、神経や脳の働きをサポートするホルモンの材料となる物質です。加熱によって水に溶け出し、冷めると固まる性質があるため結晶となって残っているだけで、異物やカビではありません。洗い流さず、そのまま調理して問題ありません。

独特のエグみの正体は?

 なお、チロシンは酸化すると「ホモゲンチジン酸」に変わります。旬の「生タケノコ」特有のエグみの原因は、このホモゲンチジン酸とシュウ酸に由来するもの。収穫してから時間が経過するほどエグみが増すため、下ゆでする際に米ぬかを加えてエグみを取り除きます。「水煮」の場合はアク抜きの処理をしてチロシンの酸化を防いるため、エグみが少ない場合が多いです。

まとめ

「水煮」は一年中手に入り、エグみが少なく、腎臓疾患がある人などカリウムが気になる場合でも食べやすい点がメリット。旬の「生タケノコ」は水煮と比べてアミノ酸やビタミン、ミネラルなどの栄養価が高い一方で、旬が短く、鮮度が低下しないうちに下ゆでしないとエグみが残りやすいなど手間がかかる一面も。続編で、生タケノコの目利きポイントと下ゆでのコツをご紹介しますので、参考にしていただけたら幸いです。

※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、久保田紀久枝・森光康次郎編『食品学-食品成分と機能性-』東京化学同人,2017、板木利隆監修『新・野菜の便利帳 おいしい編』高橋書店,2016、白島早奈英・板木利隆監修『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』高橋書店,2009

(野村ゆき)