ゴールデンウイークで気分がリラックスしたついでに、健やかで穏やかな心を保つ練習をしてみませんか?

今回は、曹洞宗徳雄山建功寺住職・枡野俊明さんの著書『上手な心の守り方 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント』(三笠書房)より、自分を守る心の持ちようを紹介します。

「心を守る」とは、「心を強くする」とは違う

枡野さんが説く「自分を守る心の持ちよう」とは、メンタルを鍛えることでも強い心を持つことでもないとのこと。必要なのは、禅でいうところの「柔軟心(にゅうなんしん)」。

この「柔軟心」とは決まった形のない雲のような心のことで、「物事に対する考え方が一つに固定されておらず、状況や相手に応じて自由自在に変わっていくことを意味する」と枡野さんは解説します。

そんな「雲の生き方」に倣って、人間も「柔軟心」を持って生きればいいのです。「何があっても無理して逆らわず、流れに任せればいいんだ」と気楽になれます。そうすることで、イヤなこと、ムカムカすること、クヨクヨすることに押しつぶされそうになる心が守られるのです。

(『上手な心の守り方 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント』はじめに)

もちろん、ストレスを跳ね返す強さも必要ですし、ムカムカやクヨクヨといった感情が湧く現実はしっかりと見極めることも重要。

そのうえで「柔軟心」をもって身を委ねることがポイントだとか。具体的に例を挙げてみましょう。

さまざまな感情から自分を守る「柔軟心」の使い方

「1章/まず、自分を嫌わない」「2章/絶対、無理をしない」「3章/すぐに、人と競わない」「4章/ささいなことで怒らない」「5章/いつまでも、クヨクヨしない」という5章で構成された本書には、99もの「心を守るヒント」が紹介されています。

今回は1章から心を守るための絶対ルールを4つ挙げてみましょう。

1.自分を「全否定」しない

新年度から1カ月。初めての職場や新しい環境で、結果が出せるかと不安になっている人もいるでしょう。しかし「結果だけ見ていると、人生は苦しくなる」と枡野さん。

結果が出なくても、結果が失敗だったとしても、それまでがんばってきたプロセスを忘れずに。自分を「全否定」しないことが大切です。

さらに、そのプロセスに目を向けることで「ここまではうまくいっていた」「ここで判断ミスをした」という気づきを得ることができ、改善策も見つかります。

2. 自分に「ある」ものに目を向ける

まじめな人ほど、自分の苦手なところばかりに目が向いてしまいがち。なぜなら、「すべてにおいて高い能力を持っていなければ、評価してもらえない」と思い込んでしまうからです。「苦手を克服しなければ…」と考えて、自己肯定感が下がってしまいます。

自己評価は「減点法」ではなく、「加点法」で

自分のプラスの能力に目を向けて、その能力を伸ばし、マイナス分をカバーするようにすれば、自己肯定感も高まるそうです。まずは自分に「ある」ものを振り返ってみましょう。

3. 無理して強がらない

一昧(いちまい)」とは、すべて同じで平等という意味を持つ仏教の言葉。枡野さんは、苦しみや悲しみと「一昧」になることの意義についても語っています。

悲しいとき、苦しいとき、うれしいとき…そのときどきの感情と一つになって命を生き切り、次の瞬間には気持ちを切り替えて生きていくことを大切にしています。そうでないと、そのときの感情が中途半端なまま残り、それを引きずって生きていくことになってしまいます。

(『上手な心の守り方 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント』31ページ)

失敗したときやつらいことがあったとき、「落ち込んではいけない」と自分の気持ちを押し殺さないこと。大切なのは「落ち込まないこと」ではなく「落ち込んでもなるべく立ち直ること」なのだそうです。

「とことん落ち込むことは、立ち直りの近道」と言われると、気持ちが軽くなりますね。

4. 何事にも「心を込める」

枡野さんが紹介するのは「不立文字(ふりゅうもんじ)」という禅の教え。「もっとも大事なことは、言葉や文字では伝わらない」という意味を持つ言葉です。

みなさんのなかには「口下手で、いいたいことの半分も伝わらない」と悩んでいる方がおられると思いますが、そんなことで劣等感を持ったり、自分を嫌ったりしなくてもいいのです。「伝えたい気持ちがあれば、必ず伝わる」と自信を持ってください。(中略)

「伝え上手」な人は決して口がうまくはありません。「伝えたい思い」が強いのです。何事も心を込めることが大切なのです。

(『上手な心の守り方 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント』53ページ)

ムカムカ、イライラ、クヨクヨといた感情から、自分を守る「柔軟心」。

この心のありようは「自然」からも学ぶことができるそうです。新緑が芽吹き、陽射しと比例するように濃くなる緑が美しい今は、柔軟心を身につけるには最適の季節と言えるのかもしれません。

本書では心を守る99のヒントを紹介していますが、まずは1つだけでも自分の心を健やかに保つ「お守り行動」を見つけてみてください。

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Source: 三笠書房