ケヴィン・コスナー&ホイットニー・ヒューストン主演の大ヒット映画をミュージカル化した舞台『ボディガード』大阪公演が現在上演中。これが3度目の上演となるが、スリルと恋愛の両面でドキドキする展開と問答無用の名曲の数々で、今回も関西の観客たちを魅了している。

◆ 音楽は「誰もが知ってるあの曲」

凄腕のボディガード・フランク(大谷亮平)が、世界的な大スター・レイチェル(新妻聖子/May J.のWキャスト)を、凶悪なストーカー(大久保祥太郎)から命がけで守る姿を描くストーリーは、ほぼ映画そのまま。ミュージカル版では、ライブシーンだけでなく、登場人物の心象を語るために、全編でホイットニー・ヒューストンのヒットナンバーを使用。実質的に、ホイットニーのジュークボックス・ミュージカルでもあるのだ。

そのため音楽は、こんなミュージカルは観たことない! と思えるほどキャッチーのオンパレード。「エンダ〜♪」のサビがあまりにも有名な『I Will Always Love You』はもちろん、とにかくアゲアゲな『How Will I Know』から、痛切なほど激しいバラード『I Have Nothing』まで。そのほとんどが全米No.1を獲得した名曲なので、洋楽に詳しくない人でも「あ、これなんか聴いたことある!」と、随所でハッとするはずだ。

◆ 絡み合う三角関係に…「関西人」興奮ポイントも

そして物語の方は、惹かれ合いながらも深入りできない主人公2人の関係だけでなく、レイチェルの姉・ニッキー(AKANE LIV)の印象を強めて、三角関係に近い構図をより明確にした。仕事でも恋愛でも妹にリードされるニッキーの愛憎入り交じった感情を、ホイットニーの哀しいバラードの数々に乗せて浮き上がらせたことで、より物語に厚みが加わっている。

さらにもうひとつ映画版と違うのは、ストーカーの正体が観客には初期の段階で明らかになること。彼がレイチェルの近くにすぐいるのに、周囲が誰も気づかないことにドキドキするという、別のスリルを演出。有名な受賞式の襲撃シーンでは、観客はまさに式の出席者として事件の現場に立ち会うかのような緊張感を味わえ、これもまた舞台版ならではの特権的スリルだろう。

俳優のほとんどが日本初演から出演してきただけあり、盤石と言えるほどの安定感。ぶっきらぼうなほど実直な大谷フランク、歌姫から1児の母の顔まで多彩な表情を見せるMay J.のレイチェル(余裕があれば、新妻の方も観てみたい!)はもちろん、関西人ならレイチェルのマネージャーを演じる内場勝則の登場にちょっとホッとするのでは。彼のために特別に付け加えられたセリフは、大阪公演で大ウケだった。

◆ アンコールではサプライズも!?

そして『ボディガード』が楽しいのは本編だけではない。アンコールでは『I Wanna Dance with Somebody』に乗せて、キャスト全員が笑顔で踊るというショータイムが! 本編ではまったく歌も踊りもなかった俳優が、キレッキレのダンスを見せるというサプライズもあり。

物語はちょっぴりビターエンドだけど、この1曲で俄然、ハッピーな気分で劇場をあとにできるだろう。ロマンチックな気分になりたい人、臨場感のあるスリルを味わいたい人、とにかく良い曲を心ゆくまで浴びたい人も、全方位から満足させてくれるはずだ。

『ボディガード』はほかに、水田航生、加藤潤一などが出演。大阪公演は4月7日まで「梅田芸術劇場メインホール」(大阪市北区)で上演。チケットはS席1万4000円ほか、現在発売中。

取材・文/吉永美和子