大手メーカーが莫大な広告費をかけ、日々宣伝競争を繰り広げる化粧品業界。私たちは「高ければ高いほど高級」と考えがちですが、その思い込みはすぐに捨て去ったほうがいいようです。今回のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』では投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹兵輔さんが、さまざまな化粧品の驚きの原価をリーク。消費者をカモにするメーカーの手口を白日の下に晒しています。

原価は激安。「高額だから高級」ではない化粧品業界の深い闇

近年は、女性だけでなく男性にも人気の化粧品ですが、意外に知られていないのは、原材料や容器といった原価が激安という業界の「マル秘事情」です。

にもかかわらず、一般的な化粧品は、けっしてそれほど安い価格で提供されてはいないのです。つまり、私たち消費者のほうが化粧品メーカーに大いに騙されている──というわけです。

それどころか、高額な化粧品ほど人気も高く、それなりに売れていたりするのですから、奇妙奇天烈(きみょうきてれつ)な状況でもあります。

化粧品は医薬品と異なり、「効能・効果」を直接謳うことが禁じられているのに、高額な化粧品ほど「美肌効果」が高いと勝手に思われて売れるのですから、不思議な商品なのです。

消費者がまんまと引っかかる「高額=高品質」という幻想

「ヴェブレン効果」で高いものほど、自己満足感を高められる!

もちろん高額な化粧品の広告宣伝には、マーケティング手法としての「ストーリ─テリング」が付随しています。

ストーリ─テリングとは、商品の「物語性」を伝えることです。

品質やこだわり、特性、誕生秘話や高級感などを強調するイメージ戦略がはたらいています。

それが「高額品=高品質」という幻想をもたらされるのです。

もちろん、そうした幻想は、他のブランド品にも多く見られる現象でしょう。

サイフやバッグ、時計、洋服、クルマなど、「どう考えても、高すぎるだろう!」と思われる商品には、特定ブランドのロゴが入っています。

そのブランドのロゴそのもので、「高額=高品質」のイメージを創りだしています。

こうした有名なブランドロゴだけで、高額品への憧憬がはたらき、心理学の「ヴェブレン効果」もあいまって、高い品ほど売れるようにもなるのです。

「ヴェブレン効果」とは、高級品を所有するに値する自分という自己満足感の拡張効果や、高級品を見せびらかしたい顕示欲求、自尊心を満足させたい承認欲求などが複雑に絡み合って、消費意欲を高める心理効果です。

経済学的には、安いモノほど売れるはず──という当然の原理原則がありますが、それとは全く逆の欲求が刺激的にはたらく特性が生まれるのです。

お伝えしたいのは、要するにスキンケアのための基礎化粧品である300円のクリームと5万円のクリームには、成分に大差はない──ということなのです。

そんなはずはないだろう!──と驚かれる方も多いでしょうか。

高額な医薬部外品のクリームほど、特殊成分を強調したりして高品質らしさを演出していますが、それもほんの微量ですから、原料価格をアップさせるほどの要因にはなっていないのです。

要するにただの特殊成分のイメージ作用にすぎないわけです。

冷静に常識的に考えてみてみるとわかることですが、水と油を混ぜ合わせただけの乳化状の「クリーム」を作るのに、万円単位の原材料費がかかるわけがないのです。

原価は、容器代や箱代も合わせて、100円以下か100円台程度というのが概ね正解なのです。

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化粧品メーカー社員に箝口令が敷かれている激安の原価

では、「業界マル秘」の化粧品の製造原価はどれほどのものなのでしょうか。

スキンケア用の基礎化粧品は、中身の大半がただの水と油です。

水と油を混ぜ合わせるための合成界面活性剤が入り、色素と香料、防腐剤に、ヒアルロン酸などの特殊成分をちょっぴり入れているだけです(一般化粧品の広告宣伝での「ヒアルロン酸表示」は認められていない)。

原材料費は概ね、化粧水が1〜2円、乳液が2〜3円、クリームが10〜30円程度です。

ではメイクアップ化粧品はどうでしょうか。

メイクアップ化粧品では、口紅が5〜10円、ファンデーションが15〜25円程度、アイライナーやマスからなども15〜30円程度です。驚くほどの激安原価で製造されています。

もちろん、量産すればするほど、さらに原価は下がります。

こんな製品を、5,000円とか、1万円以上で買ってしまっているのが、共同幻想を抱かされた消費者ということになるのです。

たとえば、特殊成分のヒアルロン酸は、1cc50円程度で6Lもの保水効果がり、0.1ccを加えてもたったの5円です。(悪徳美容整形外科では1cc5万円と謳って患者の肌に注射する)。

「えっ、まさか!そんなに安いのか!」と驚かれるかもしれませんが、これらはすべて本当のことなのです。

このことは、化粧品会社の一般社員ですら、自社商品の原価がそこまで安い──などとは知らされていません。

しかし、化粧品会社の製造工程職や研究職、経理部などにいる社員たちにとっては、「化粧品の原材料=激安」というのは、当たり前中の常識なのです。緘口令が敷かれているだけです。

品質に大差無い100円ショップと化粧品メーカーの美肌クリーム

読者の皆さんも想像してみてください。

100円ショップに行けば、さまざまな上質の美肌クリームが税抜き百円で売られているでしょう。

医薬部外品の薬用クリームや保湿クリーム、アロエクリームなど、着色料や添加物不使用などの特色を謳った保湿クリームなどもガンガン売られているのです。

100円ショップの商品とドラッグストアで2000〜3,000円で売られている商品にどれほどの違いがあるとお思いでしょうか。

水と油を混ぜ合わせただけの商品が、片や税抜き100円で、片や数千円単位という価格差を示していること自体が、驚くべきことでしょう。

これは、日常接する化粧品類は、大体2,000〜3,000円はする──という価格の刷り込み現象による「共同幻想」にすぎないのです。

これを「アンカーリング効果」といいます。

船のアンカー(錨=いかり)が、船の位置を固定するように、「化粧品類は2,000〜3,000円が常識」という固定的な思い込みにすぎないのです。

ゆえに、100円ショップの保湿クリームを見て、「なんでこんなに安いの!」と驚き、勝手に品質が劣っている──とさえ思ってしまうのです。品質に大差はないのにです。

そのうえ、万円単位の高額の化粧品に対して、勝手に「ものすごく高品質な成分が入っている」などと思い込むのも、アンカーリング効果による 「共同幻想」なのです。

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中身の原材料よりも容器や箱代のほうが高いという事実

実は、笑える話ですが、化粧品は原材料よりも、容器代や外装パッケージの箱代のほうが高いのです。

お洒落な容器に高級感のある外装パッケージが数十円したりするからです。

そうしたタダみたいな商品が、数千円や数万円で売れるとなると、オイシイ業界と思われます。

ゆえに他業界から参入する企業が、この業界では目白押しとなっているのです。

もちろん、健康サプリメントなども「原料=激安」なので、同様の状況にあるでしょう。化粧品会社の多くはサプリメントも手掛けています。

業界は化粧品メーカーを名乗っていてもファブレス化(工場をもたずに外部専門メーカーに発注して製造してもらう仕組み)がすすんでいるので、OEM(発注元のブランド名義で製造する)だらけです。

一定のロットが定期的に捌ける販路さえあれば、業界への参入障壁も低くなるゆえんなのです。

ただし、どれほど粗利益率が高くても、一定レベル以上の売上を作るには、宣伝広告費や人件費、流通コストや販管費が甚大です。

コストを過大に注がないと、この業界の激烈な生き残り競争には勝てないからです。

原価は激安でも生き残り競争は過酷な化粧品業界

大手5社で80%のシェアを占めているのが化粧品業界!

業界規模は、2021年で2兆8,000億円ほどと推計されていますが、資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビス、DHCの大手5社だけで、8割強のシェアを占めています。

残り2割弱の市場を中小、零細の百数十社が分け合って競合しているのが化粧品業界の構図なのです。

業態としては、美容部員によるカウンセリング販売を行うのが得意な制度品メーカー、卸経由で小売りに流す一般品メーカー、通販専業のメーカー、訪問販売のメーカー、百円ショップ向けの百均専業メーカーなどに分かれています。

どんなに原価激安でも、生き残りの競争にしのぎを削らねばならない、非常に過酷な業界でもあるわけです。

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効き目のありそうな「医薬部外品」の化粧品が増えている裏事情

クリームなどのスキンケア化粧品は、一般品の他に「医薬品」「医薬部外品=薬用」といった種別があります。

これらのスキンケア化粧品はすべて「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」に基づいた内容・成分でなければなりません。

ちなみに、健康食品などのサプリメントや健康・美容器具などについても「薬機法」で規制されています。

「医薬品」は病気などの疾患の治療を目的とした「薬」です。

厚労省から有効成分の効果が認められた配合成分が主体です。

医師が処方したり、ドラッグストアで販売されるOTC医薬品 と呼ばれる市販薬などがあります。

保湿に有効な白色ワセリン、高濃度尿素、ヘパリン物質などが皮膚用の医薬品の成分として知られています。

「医薬部外品=薬用」とは、厚生労働省の許可した効果・効能が認められた成分が、一定の濃度で配合されたものです。

「治療」にまでは至らず、「衛生や防止」が主目的になります。

「にきびを防ぐ」「肌荒れ防止」「荒れ性対策」「皮膚の殺菌」「日焼けによるシミ・そばかすの防止」といった有効成分の効能効果を訴求出来ます。

なお、一般の化粧品は、薬機法によって配合量の多いもの順に「全成分表示」が原則になっています。

つまり、一般の化粧品は、成分表示をすべて記載しなければならないのです。消費者が自ら調べて、アレルゲン物質が含まれていないか判断して、肌トラブルを避けられるようにしているからです。

もちろん、医薬品の場合も、有効成分と分量、添加物すべての成分の表示義務があります。これは医師が処方する際の判断材料とするためです。

ただし、医薬部外品の場合は、指定有効成分のみの表示でよいとされています。

このようにスキンケア化粧品は、「医薬品」「医薬部外品」「一般化粧品」と、3種に分かれますが、だからといって、これらの製造原価に大差があるわけでもないのです。

開発・製造時の取り扱いメーカー自体に法的な制約が種々あるだけです。

ゆえに、近年では、化粧品の差別化を図るべく、「医薬部外品」の化粧品が増えています。そのほうが、効き目がありそうにも見えるからです。

そのため医薬品受託製造(CDMO)企業に対してOEMでの開発・製造を委託する化粧品メーカーも近年は多くなっているのです。

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よくよく考えれば判る「有効成分の浸透性」のイカサマ

ところで、そんな化粧品ですが、はたして美白や肌質向上の効果などは、本当にあるのでしょうか。

実は、化粧品は「肌に有害」という指摘さえあるのです。

肌に異物を付着させるメイクアップ化粧品だけでなく、スキンケア化粧品においてもしかりなのです。

肌にベタベタと異物を塗り込むのですから、さもありなん──という話でしょう。

そもそも、肌は弱酸性(ph値4.5〜6.5)の状態を保っています。ゆえに、ほとんどの化粧品は弱酸性です。

一部の石鹸やふき取り化粧水に、弱アルカリ性のもの があるだけです。

弱アルカリ性のものでも、肌は、じきに弱酸性に戻るのでさほど心配はないようですが、使い方次第で逆効果もあるでしょう。

さてさて、医薬部外品の薬用化粧品などは、有効成分の浸透性をよくアピールしますが、本当のことなのでしょうか。

そもそも皮膚は「排泄器官」です。汗や古い角質などを外部に排出しています。

つまり、外部からの水や水溶液、細菌やウィルスなどの侵入は、皮膚表面の「表皮」でブロックされる仕組みになっているのです。

これは、表皮に存在するランゲルハンス細胞が異物を察知し、免疫細胞に指令を出して異物を排出し、肌を守るシステムがあることを意味します。

また、ランゲルハンス細胞が、紫外線や乾燥に皮膚が過剰反応して炎症するのを防ぐべく、細胞反応を鎮静化させる働きも同時にあるとされているのです。

皮膚の構造は、一番外側の角質層を含む「表皮(厚さ0.12ミリ)」と、毛細血管が通り、コラーゲンやエラスチン、繊維芽細胞、アルロン酸などを含んだ「真皮(同1.8ミリ)」、そしてその奥の「皮下組織(同0.08ミリ)から成り立っています。

これらの層を突破して、外部から体内への「経皮吸収」をさせるためには、本来かなり小さな分子レベルでなければ無理なのです(経皮吸収されると血管などに入り込んで「経皮毒」となり、有害で危険といわれます)。

通常の化粧品にそんな浸透力はないのです。

つまり、化粧品は、肌の表面に留まって単に水分で潤いを保たせるため、水分の蒸発を防ぐ油分と混ぜ合わせた「水溶液」を肌に塗りたくっているだけのもの──に他ならないわけです。

免疫美容の見地からは、皮膚表面に弱酸性の水溶液を塗りたくっていると、弱酸性が過剰ゆえに、弱酸性を保つための汗などの分泌が抑制され、かえって乾燥肌などの皮膚トラブルにつながる──という指摘まであるのです。

いずれにせよ、たかだか化粧品に、大きな期待をもつことは、ナンセンスです。

水と油を混ぜ合わせるための、石油系の合成界面活性剤は、肌に有害という指摘も数多くあるからです。

皮膚トラブルに遭わないためにも、一般化粧品や薬用化粧品を使う時には、どんな怖い成分が入っているのかも、自身でよくチェックしたうえで、パッチテストも併用し、慎重に使い始めるのがよいでしょう。 過剰な期待 は無意味だからです。

ともあれ、高額で高級な化粧品には騙されないようにしたいものです。

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