日本中が震撼した、長野猟銃立てこもり事件。何が容疑者をあのような凶行に駆り立てたのでしょうか。今回のメルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』では現役の精神科医で作家の和田さんが、専門家の視線でその原因を解説。さらに容疑者に銃所持を許可し、人命を奪うことに加担したと言っても過言ではない地元警察を強く批判しています。

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長野猟銃立てこもり事件で思う、日本の「銃規制」

Jアラートでかき消された感があるが、もう一つの大ニュースは長野の立てこもりだろう。

4人を殺害している。うち二人は警察官で、猟銃で射殺されたとのことだ。

犯罪心理学者と称する人間は、自己顕示欲のための犯罪と断じているが、私にはそうは思えない。

大学生の頃から引きこもるようになり、それまでは明るく、社交的な性格だったのにガラっと変わったことや、今回のように悪口を言われているというような妄想をもち、それをエスカレートさせて、相手を殺してしまうようなことや、警察官の射殺にしても、殺されると思ったということで相手を撃ち殺すというパターン、そして銃で撃ったあと刺し殺すという相手を完全に亡き者にしようという手口を見る限り、我々精神科医が聞けば、統合失調症を発症したと疑ってしまう。

これで精神鑑定で、統合失調症という話になって、心神喪失で無罪などということになれば、また上級市民だとかいう話になったり、精神障碍者への差別が余計にひどくなる気がするが、私は今回のケースについては、そういう法体系になっている以上、心神喪失だとも思う。

ただ、私も実はこの件に関しては、この容疑者が上級市民であったために起こった悲劇だとは見ている。

一つは、統合失調症の疑いがかなり強いのに、なんと警察は4丁もの所持を許可している。猟友会にも入退会を繰り返しているというのにである。

この容疑者はある時期から銃に興味をもったというが、これだって統合失調症が関係している可能性は強いだろう。

妄想的なのを見抜くのは難しいかもしれないが、急に引きこもるような人にホイホイと銃所持の資格を与えていいものなのか?車の免許と違って、それがないと生活に困るわけではないのだ。

おそらくは、町の有力者の子どもということで、ほとんどフリーパスに近い形で、銃所持の資格が与えられたのだろう。田舎の警察のやりそうなことだ。そして、その警察官が被害者になっているのは皮肉だ。

銃資格の場合、3年に一度の更新もある。生活状況などをみて返上させることもできたのだ。

警察官は防弾チョッキもせずに、容疑者を捕まえに行ったというが、銃資格を持つ人などそんなにいないはずなのに、この容疑者が銃をもっていることくらい把握しているはずなのに、この対応は何なのだろうか?

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精神障碍者に対する差別は世界で最も厳しい国だし、平気で閉じ込めろというのに、有力者の子弟なら、精神障碍者でも銃を持てる。高齢者が事故を起こせば、高齢者全体から、自動車を取り上げろというのに、有力者の子弟なら精神障碍者でも銃がもてる。日本というのは、そういう国なのである。

殺された警察官が気の毒でならない。私は警察が嫌いと思われているかもしれないが、組織としての警察が腐っているだけで、一人一人はまじめなのはよくわかっている。

さらにいうと、いきなり学校をやめて急に引きこもるようになり、被害的な言動が目立つというのに、精神科にかかるということが恥だと思う田舎の名家にありがちな対応をすることで、そんなに重い統合失調症でなさそうなのに、薬を飲むことなく、こんな悲劇を引き起こすことになった。

上級市民だから銃を与えられ、上級市民だから精神科にかからないことで起こった事件に思えてならない。

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※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2023年6月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。6月分のすべてのメルマガが届きます。

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