「ウクライナ黒幕説」「ロシアの自作自演説」等々、陰謀論が飛び交う状況となっているモスクワ郊外のコンサート会場で発生したテロ。しかしここに来て、新たな「事実」が明らかになったようです。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、テロ実行犯はSNSで募集をかけられた「闇バイト」であったとする報道を紹介。日本円にして80万円で143人の命を奪った犯人たちと、犠牲となった市民に対する率直な感情を記しています。

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※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

【仰天】モスクワテロは【闇バイト】だった?!

全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。

今回は、3月22日起こった「モスクワテロ」の続報になります。前回までの話とつながっていますので、まだの方は、必ずこちらをご一読ください。

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さて、今回のテロについて「イスラム国ホラサン州」が犯行声明を出しました。そして、犯人自身がとった動画が、イスラム国が運営するアマーク通信で公開されていた。それで、プーチン自身も、「イスラム過激派の犯行だ」と認めざるを得なくなっています。『読売新聞オンライン』3月26日付。

ロシアのプーチン大統領は25日夜(日本時間26日未明)、モスクワ郊外のコンサートホールで起きたテロ事件に関する政府の対策会議で、テロは「イスラム過激派によって実行された」と明言した。犯行声明を出したイスラム過激派組織「イスラム国」による犯行だと事実上、認めた形だ。

※ しかし、「黒幕」はウクライナ、アメリカと根拠ゼロで繰り返してはいます

さて、「イスラム国にしては、挙動がおかしい」という主張もあります。クレムリン情報ピラミッドのロシア国営『スプートニク』3月27日付を引用してみましょう。

元米海兵隊情報将校のスコット・リッター氏は、スプートニクに対し、今回の犯行がISISとは「似て非なるもの」と主張し、次のような分析を示した。

 

西側メディアがISIS犯行説の根拠としているアマーク通信が発信したとみられる犯行声明では、実行犯とされるテロリストの信仰告白の合図が左手で示されているものがある。イスラム教では右手は正義の手、左手は悪魔の手であり、左手での信仰告白は彼らが本物のイスラム教徒でないことを示唆している イスラム過激派のテロリストは通常、天国での永遠の報いを目指し、「殉教者」となる。だが、今回の実行犯が死ぬまで戦わず逃亡を図ったのは、彼らの思想との辻褄が合わない テロリストが「フーリー(72人の処女)」が待つ天国に向かうため、正しいことをしていると認識していたのなら、犯行声明の顔にぼかしがかかっているのにも疑問が生じる

 

リッター氏はこれらを考えれば、「彼らは聖戦戦士でなく傭兵だ。彼らは金をもらって非正規戦争を行ったテロリストで、イスラム教徒は関係のない政治的行為だ」と結論づけた。

(イスラム教の)聖戦戦士ではなく、傭兵だそうです。要するに、「金目当て」とのことです。

これ、どういうことでしょうか?

実をいうと、「イスラム国犯行説」と矛盾していません。まず、逮捕された実行犯は、「金のため」と正直に告白していました。『日テレニュース』3月24日付。

ロシアのコンサート会場で起きた銃乱射事件で、当局は容疑者11人を拘束したと発表しました。現地メディアが公開した尋問の様子とされる映像の中で、容疑者の一人は、およそ80万円の報酬を約束されたと話しました。

ロシアメディアが公開した容疑者への尋問の様子を撮影したとされる映像では、拘束された男は調べに対し、50万ルーブル、日本円でおよそ80万円を約束され、人々を殺したという趣旨の話をしていて、テレグラムというメッセージアプリで指示を受けたと話したということです。

「80万円を約束され、人々を殺した」そうです。そして、「テレグラム」で指示を受けたと。

で、具体的に、どんなテレグラムなのでしょうか?『中央日報』3月28日付。

ロシア・モスクワ郊外の公演場で銃を乱射して無差別攻撃をしたテロ犯は、イスラム極端主義武装勢力イスラム国(IS)の分派「イスラム国ホラサン州」(ISIS-K)のテレグラムチャンネルで募集されたと、スプートニク通信が27日(現地時間)情報筋を引用して報じた。

 

この情報筋は「特定人物に関する資料が確保された。彼はテロ攻撃を遂行するために人を募集するテレグラムチャンネルの会員だったという同僚の話があった」と伝えた。

 

また別の調査過程で「クロッカスシティーホール(公演場で)テロ攻撃をした人たちは同じくテレグラムチャンネルで募集されたことが確認された」とし「これはサドイ・ホラサン(=ホラサンの声)というテレグラムチャンネル」と説明した。

「イスラム国ホラサン州」(ISIS-K)のテレグラムチャンネルで募集されたそうです。

流れをまとめると、

「イスラム国ホラサン州」(ISIS-K)のテレグラムチャンネルで、「テロ実行犯」が募集された【 闇バイト! 】 報酬は、日本円換算で80万円 それで、イスラム国の聖戦戦士としては、奇妙な行動をしている

ということなのでしょう。

タジキスタン人の実行犯たちは、「80万円ゲットできる」という闇バイトに募集し、143人を虐殺した。

しかし、逮捕されたので、報酬の80万円も受け取れない。それどころか、何十年も刑務所で暮らすことになる。本当に、彼らにとっては、破滅的な闇バイトでした。そして、犠牲になった民間人がとてもかわいそうです。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年3月28日号より一部抜粋)

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