「ネタキャラ」では終われない?

 初登場時にはただの「ネタキャラ」に見えたのに、いつの間にかストーリーの展開を左右する重要な存在に出世したり、意外なタイミングで活躍を見せたりするキャラは、マンガの醍醐味のひとつです。

 例えば、『ドラゴンボール』の「セル編」から登場したミスター・サタンは、セルと自分の大きすぎる戦力差に気付かずに一撃でぶっ飛ばされ、その後ベジータからは「バカの世界チャンピオン」とまで言われていました。しかし、人造人間16号の頼みで、彼の首を悟飯の所まで投げて勝利の一助を担っています。

 さらに、続く「魔人ブウ編」では、最強の敵・魔人ブウと仲良くなって殺戮をやめさせた他、魔人ブウ(純粋)との最後の戦いでは悟空が元気玉を放つための大きな手助けをし、悟空から「おめえは世界の救世主かもな」との言葉をもらっていました。

 サタンのように「ネタキャラである本質は変わらないまま活躍するキャラ」は、定期的に話題になります。

『ONE PIECE』に登場するバギーは、近年の「大出世キャラ」の代表格と言えるでしょう。海賊王ゴール・D・ロジャーの「ロジャー海賊団」で見習いをしていたバギーは、のちに「バギー海賊団」を結成し「東の海(イーストブルー)」を中心に活動していました。丸い赤っ鼻が特徴のバギーは残忍な海賊でしたが、あまり強くはなく、初登場時はルフィに敗北しています。

 後に、ローグタウンでルフィを斬首しようとしましたが、振り上げた剣に雷が当たってそれも失敗、グランドラインに突入した後は、ずっと探していた「キャプテン・ジョンの宝の洞窟」と勘違いして海軍の駐屯所に攻め込んでしまい、あえなく逮捕されました。そして「海底監獄インペルダウン」に収監され、囚人生活を送ります。

 しかし、囚人生活を送っていたバギーには、エースを助けにきたルフィと再会したあたりから強運が舞い込むようになります。インペルダウンに収容されている囚人たちは、実力的にはバギーよりもずっと格上の猛者ばかりでしたが、バギーは次々と「強い」「カリスマ」と勘違いされていきました。

 彼らの思い込みは凄まじく、バギーが四皇・白ひげにたまたま声をかけられただけなのに、「白ひげと同格」と勘違いされるほどです。強運ゆえに部下たちだけでなく、世間や海軍からもその実力を都合よく「誤解」されるバギーは、その後、あれよあれよと出世し、「ワノ国編」の終盤で四皇のひとりになりました。

 バギーの懸賞金は初登場時1500万ベリーでしたが、現在では31億8900万ベリーまで跳ね上がっています。さらに、最終章ではある重大発言をし、ファンの間では「こいつまさか、本当に海賊王にまで出世するのでは」との予想も出始めました。

 サタンやバギーのような大活躍、というわけではないものの、短い出番で熱い心意気を見せたキャラもいます。『BLEACH』に登場したド派手な霊能力者ドン・観音寺はTV番組「ぶらり霊場 突撃の旅」を持つ「コメディ担当」のポジションですが、ちゃんと霊は見えており、死神代行の黒崎一護の不在中は「空座防衛隊」のリーダーとして虚(ホロウ)退治をしていました。

 そんな観音寺は、「破面編」の終盤で、有沢たつきを追い詰めていた強敵・藍染惣右介の前に突如現れます。観音寺は藍染の圧倒的な霊圧に当てられ冷や汗をかき、たつきからは逃げるように促されますが、「戦いから逃げるヒーローを子供たちはヒーローとは呼ばんのだよ」と言い放ちます。

 当然ながら相手にはなりませんでしたが、勇敢に藍染に立ち向かっていったことで読者からの観音寺の評価は上がり、今も人気のキャラとなっています。ネットでは「誰よりもカッコイイおじさん」「藍染様に『何者だ?』って、興味持たれてる時点で凄い」「時間稼ぎにもならないの分かってて飛び出すとは、本物の男」と称賛されていました。

 その他、実は27歳という設定ながらおじさんにしか見えない『トリコ』の美食屋・ゾンゲも、終盤で予想外の活躍を見せました。ゾンゲは捕獲レベルの低い敵しか倒せない美食屋でしたが、初期からその強運でどんな過酷な環境や猛獣と出くわしても生存し、「グルメ界」での地球全体がボロボロになるほどの最終決戦後も、無傷で生き残っています。

 そんな彼は、最後の最後に「美食會」のボス・三虎から、強大な「食運」を持っていることを見抜かれました。どんな能力でも「コピー」できる三虎はゾンゲの「食運」をコピーして、戦いで荒廃した地球全体にその恩恵を振りまき、息絶えます。間接的にちゃっかりと世界を救ったゾンゲに対し、ネット上では「ノーダメージのまま英雄になりやがった(笑)」「運だけじゃなくて、部下は大事にしているし、危機察知はできるし有能」「戦闘力よりよっぽど大事なものを持ってたとは」と、今でも称賛が集まっています。